研究概要 |
これまでの研究により過塩素酸および水分を含むエチレングリコール中での電解処理によりSUS316ステンレス鋼表面にナノメートルオーダーの孔が形成することが明らかとなっている。本年度は、このステンレス鋼表面ポーラス化現象発現に及ぼす電解電圧、電解溶液といった電気化学条件および材料因子の影響について調査した。その結果、以下のことが明らかとなった。1)有機溶媒に水分を加えずに大気開放下で電解処理を行った場合、ポア形成速度は著しく低下し、一方水分を加えすぎた場合電解処理を安定して行えずポアの規則性は低下することが明らかとなった。また、水分量を最適化することによりわずか1秒の電解処理でもSUS316ステンレス鋼表面をポーラス化できることが分かった。2)電圧が20~70Vの範囲で電解処理を行った場合、SUS316鋼を安定して電解処理を行うことができ、電解電圧の増加にともないポア径は増大し均一性も高くなるが、80V以上では電解が不安定となりポア径の均一性は著しく低下することを明らかにした。3)SUS316ステンレス鋼以外にも、SUS304, SUS310S, SUS440といった様々なステンレス鋼やFe-11Cr合金などにおいても電解処理によってポーラス層を形成することが可能であった。またポア径は鋼中、合金中のCr量に依存し、Cr量が高いほどポア径は小さくなる傾向が見られた。さらにポア径の規則性もCr量によって変化し最適量が存在することが明らかとなった。
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