平成24年度はSi-Sn合金の一方向凝固時にバルク状のSi結晶が得られる凝固条件を調査するとともに、凝固精製による不純物除去効果について検討を行った。 Sn-50mol%Si、Sn-70mol%Si、Sn-95.8mol%合金の一方向凝固実験を行い、Siの結晶成長挙動に与える温度勾配と冷却速度の影響を調査した。Siの凝固速度は温度勾配の増加に伴い増加し、また溶融合金中初期Si濃度の増加とともに増加する傾向にあった。バルク状のSi結晶が得られる条件が、別途決定した溶融Si-Sn合金中Siの拡散係数に基づいた組成的過冷却条件によって整理可能であることを示し、Siの成長機構が溶融合金中の拡散律速成長によることを明らかにした。また組成的過冷却を生じた場合には、バルク状の結晶と溶融合金の界面の近傍にて晶出したSi結晶が、溶融合金とシリコンの密度差により同結晶が界面付近から浮上離脱する現象を確認した。 一方向凝固実験で見出した最適条件により凝固精製実験を行った結果、Fe、Tiなどの金属不純物元素に対して98%以上、BとPに対してそれぞれ60%、70%の高い除去率を得ており、特に金属不純物元素に対して凝固精製の有効性が明確になった。 さらに、溶融Si-Sn合金からのBの除去を検討する際に必要な溶融Si-Sn合金中Bの熱力学的性質の測定を行った。1673Kにて種々の組成の溶融Si-Sn合金へのBの溶解度を測定するとともに、Si-Sn-B系の相平衡関係を調査した結果、溶融Si-Sn合金中全組成範囲においてBの活量係数が求められ、高Si組成域に比べて高Sn組成域ではBの活量係数が3桁近く大きいことが判明した。以上の結果から、SiにSnを添加することでBの溶媒からの除去がより容易になることが示唆され、Si-Sn溶媒にスラグ処理を施し、凝固精製を行う効率的な脱Bプロセスも提案された。
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