市販のMgB_2粒子を購入し、バインダーなしでプリフォーム(圧粉体)を作製し、3次元溶湯浸透法によりアルミニウム合金およびマグネシウム合金との複合材料ビレットを試作した。それらの複合材ビレットから、超伝導線材の押出加工を試みた。この作製プロセスにおいて、まずMgB_2粒子の充填率を上げるために、ガス雰囲気を制御した環境下で購入したMgB_2粒子を粉砕および分粒した。このことで押出し前の複合材料ビレット中のMgB_2粒子の体積率を高くし、更に加工率(押出比)を上げることで、線材中の超伝導体積率を改善した。マグネシウム合金の複合材料ビレットでは、添加元素(アルミニウム、亜鉛)と超伝導臨電流密度の相関を詳細に調査した。その結果、アルミニウムを添加すると超伝導臨界温度は低下するが臨界電流は増加することがわかった。さらに、亜鉛を1%添加すると、超伝導臨界温度は変化しないが、臨界電流は更に増加することがわかった。 本研究から、MgB_2粒子とマグシウム合金の複合材ビレットから超伝導線材の押出加工が可能であることが明らかになった。また、線材中の超伝導体積率を改善する方法も明らかになった。この結果は、新しい超伝導材料の作製プロセスをもたらしている。更に、MgB_2超伝導粒子の欠点である低い臨界電流密度を改善する方法を見いだした。このことは、MgB_2の実用超伝導線材を作製する上で非常に重要である。亜鉛添加と臨界電流密度の向上に関する因果関係を詳細に調べるため、複合材料ビレットの組織観察が重要である。
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