研究概要 |
前年度の研究成果として、3次元溶湯浸透法によりMgB2粒子とマグネシウム合金を使った複合材料ビレットを作製するプロセスを確立した。そのプロセスにより、母相のマグネシウムにアルミニウム(0~9wt%)と亜鉛(0~9wt%)を添加した試験試料を作製し、超伝導臨界温度Tcや超伝導臨界電流密度Jcを評価した。その結果、Mg-9wt%A1-1wt%Znを母相とした複合材で最も高いJc値(1.6×10^4A/cm^2,T=5K,B=IT)を得た。亜鉛の添加がJcを高めていると予想されたため、アルミを添加しないMg-Znを母相とする複合ビレットを4種類(1,3,6,9wt%)の試験試料を作製した。その結果、MgB_2/Mg-Zn試料では、TcとJcがほとんど変化しなかった。これまでMgB_2のMgをZnで置換するとTcやJcが向上するという報告があったが、複合材では同類の効果は見られなかった。詳細な調査によりMg-9wt描1-1wt%Znを母相とした複合材でJcが上昇した原因は、Zn添加により析出したMg_17Al_12化合物が磁束のピン止め効果を高めているためと考えている。代表的な試料を選択して比熱測定により超伝導体積率の評価を行った。その結果、超伝導体積率はMgB_2の仕込み量(約50%)とほぼ等しく、3次元溶湯浸透法による複合材作製では、MgB_2がほとんど溶解せず粒子のままバインドされていることを示している。更に、上部臨界磁場Hc2のとJcが強い相関があることから、MgB_2の結晶粒界がピン止め点として働いていることを示唆しており、MgB_2粒子を小さくすることでJcの向上が期待できる。マグネシウム合金を母相とした複合材ビレットを利用した線材押出は困難であった。アルミを母相としたMgB_2押出線材の作製に成功しているので、加工性の改善に取り組む。
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