研究概要 |
多結晶シリコン(Si)インゴットは太陽電池用素材の総生産量の約50%を占めており,太陽光発電産業の先導的役割を果たす材料であるが,さらなる高発電効率及び高生産性向上のためには,結晶学及び冶金学的見地からの品質改善が必須とされている.しかしその生産プロセスにおいて多結晶シリコンインゴット切削加工くず廃棄問題がある.本研究では,シリコン原料を有効に使いながらも,高い発電効率を有する太陽電池モジュールの製造プロセス技術を見出すことを目的とし,本年はSi微粒子の組織と結晶粒径・方位について調査した. 昨年購入したレーザ溶融装置をさらに改良し,粒子製造法の最適化を行った.まず石英製板またはルツボに充填させた9Nの高純度Si粉末を,レーザ溶融装置の雰囲気チャンバ内に設置し,アルゴン(Ar)雰囲気で293K~1013Kまで加熱させた後,レーザ照射によりSiを溶融させた.その後,冷却させて高純度Si粒子を作製した. 得られたSi粒子の大きさは照射条件に大きく依存しており,室温~融点までに要する顕熱と融点における潜熱の総計がSi粒子直径を支配していることが明らかとなった.また,石英製ルツボ内に充填した高純度Si粉末へレーザを照射し,得られたSi粒子の結晶粒径と方位を解析した.初期凝固における結晶粒径は比較的細かかったが,これは周囲を囲むSi粉末に影響されたものと思われた.この時,離型材である窒化珪素により核生成を制御できることも明らかとなり,その成果を発表した.Si粒子内部においては,結晶はインゴット試料と同様に成長とともに粗大化し,雰囲気温度が高温になるほど結晶粒径も粗大化した.これは溶融した後のSiの冷却相度は雰囲気温度に依存するためと考えられた.EBSPによる解析から,<211>や<101>等の優先成長方位に沿う結晶と双晶が結晶の粗大化を支配していると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Siマイクロ粒子の製造条件が,潜熱等を考慮した冶金的知見と電気的知見から最適化できること,及びSi粒子の球状化とその内部の結晶方位解析により,凝固初期における核生成と結晶方位選択,中期における粗大化の解析は当初の予定通りであるが,離型材である窒化珪素が核生成を支配している事実を見出し,今後の結晶方位制御に極めて重要な成果を得ることが出来たため.
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究は順調に進行していることから,平成24年度も当初の予定通り,粒子の溶融機構の解析とエピタキシャル成長機構の解析を主とした解析を行う/現在のレーザ溶融装置をさらに改良し,試料全体及び局部的に温度分布が付与された条件において薄膜試料を作製すると共に,試料の厚さと結晶成長方位のより高度な制御を行う. 一方,平成23年度に得られた離型材が核生成を支配している事実が明らかとなったことから,初期凝固組織制御法の確立を新たな目的として加え,離型材と溶融Si界面における結晶整合性,過冷度測定,反応性等の新たな実験を追加して研究を行う.得られる成果は再び当初の計画と整合させで,結晶方位制御技術法を確立させる.
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