太陽電池素材として多結晶シリコン(Si)は総生産量の約50%を占めており,本分野の先導的役割を果たす材料であるが,更なる普及のために高い発電効率及び生産性効率の向上が求められている.一方,半導体産業ではSi原料の枯渇が懸念されており,同時にSiインゴットからウエハへの切削加工において切削くずが発生する問題がある.このような背景から,本研究では結晶学・冶金学的見地から高い発電効率を維持しながら切削加工を伴わない太陽電池モジュールの製造プロセス技術を見出すことを目的とし,本年はファセット及びノンファセット金属の局所溶融状態とその凝固過程について調査した. ファセット合金としては高純度Si粉末を選択し,高純度Ar雰囲気または大気雰囲気において298~1023Kまで昇温保持した後にレーザ溶接機を用いてSi粉末を溶解・凝固させた.Siの融解潜熱は1800kJ/kgと極めて高いが,比較的長いパルスのレーザを照射することにより,数秒で溶解凝固できること,また溶解後1~2ミリの粗大球状Si塊は熱収縮により粉砕されないことを見出した.この時基板または融点以下のSi粒子に接触した場所から核生成していた.さらに薄膜状へ試料形状を変化させると,凝固組織と熱処理組織間の熱応力によりき裂が発生し,雰囲気と冷却においても温度分布制御の最適化が重要と考えられた. 一方,Fe-C系ノンファセット合金表面を298Kの高純度Ar雰囲気または大気雰囲気においてレーザ溶解・凝固させた.レーザ照射により試料深さ0.05~0.15mmが溶融され,基板面に垂直方向に優先成長方位が配列し,ノンファセット系では熱拡散が凝固結晶方位を支配していることを示した.また溶融領域より低温側では固相状態で加熱された組織が観察され,これらの形成組織はレーザ照射面,レーザ移動速度,試料熱拡散係数により予測できることを示した.
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