本年度は、超臨界二酸化炭素中と有機溶媒中におけるPt(acac)2、骨格鎖長の異なるアミノ酸の水溶液中、高圧CO2+有機溶媒の混合溶媒中における各種溶質について拡散係数の測定を行った。 Pt(acac)2について、これまでacac錯体については中心金属の種類によって質量は大きく異なるが、分子サイズはあまり変化しないので、有機溶媒中では溶質分子量にではなく、拡散係数値はacac配位子の数に依存することを見出したが、超臨界二酸化炭素中においても同様の結果かどうか、広範囲に圧力を変化させてCIR法およびTaylor法により測定した。その結果、有機溶媒中と同様の傾向を示したが、有機溶媒中ほど中心金属が変わっても拡散係数値は一致せず、特に低圧になるほどその差は広がった。これは、錯体の配位子と中心金属との結合距離の圧力依存性によるものと考えられる。 アミノ酸は強い相互作用を有するアミノ基とカルボキシル基を有するので、両官能基の距離が変わると、水中の拡散係数値に影響を与えるかどうか、Taylor法により調べた。その結果、拡散係数値はアミノ酸の分子量に依存し、官能基間の距離にはあまり依存しなかった。 高圧混合流体はガス膨張液体など、モル分率と圧力を変化させることで溶媒物性を大きく変化させることができるので、溶質-溶媒間相互作用を調べる上でも興味深い系である。この混合系(具体的にはCO2+メタノール)において、Taylor法を用いた測定から、溶媒組成を変化させたとき、拡散係数値がどのように変化するかを数種の溶質について調べた。また、合わせて文献値についても検証した。その結果、混合溶媒の過剰モル体積が最大の組成付近で、拡散係数の負の過剰量が最大になり、純溶媒中から予測される混合系における拡散係数値からの偏差が大きくなった。溶液構造が溶質の拡散性に大きく影響を与えることが明らかになった。
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