研究概要 |
膜分離法は、分子と膜素材との親和性の差や分子の大きさの差などを利用して分離する手法であり、蒸気圧の差を利用して分離することが困難な系において蒸留に替わる省エネルギーな分離プロセスとして期待されている。本研究ではsilicalite-1を用いて、ゼオライト細孔による分子ふるい作用によって分離性能を発現する膜の開発を行った。 silicalite-1膜は、アルミナ管状支持体(外径 10 mm, 内径 7 mm, 長さ 30 mm, 平均細孔径 150 nm)上に種結晶を用いた2次成長法で調製した。粒子径の異なる結晶を用いることで、担持箇所が支持体内部または外表面となるよう制御し、2種類の膜(A, B)を調製した。 種結晶の粒子径が担持状態に与える影響について検討した。支持体細孔よりも小さな種結晶(約100 nm)を用いた場合、結晶の多くは支持体内部に担持された。これは、水が毛細管力によって支持体細孔内部に引き込まれる際に、種結晶も内部に侵入したためである。一方、支持体細孔よりも大きな種結晶(約400 nm)を用いると、支持体表面に種結晶の層が観察された。これは分散媒は内部に引き込まれるが、結晶は細孔に侵入できないためだと考えられる。種結晶を内部に担持した支持体では支持体とsilicalite-1のコンポジット層(膜A)が、表面に担持した支持体ではsilicalite-1単独の層(膜B)が観察された。 2種類の膜のキシレン異性体透過特性を比較した。原料としてm-キシレンとp-キシレンの等モル混合物を用い、膜温度473-653 Kの範囲で蒸気透過分離試験を行った。膜Bはどの温度でも高いp-キシレン透過流束を示し、548 Kにおいて透過流束は6.70 × 10-4 mol m-2 s-1、分離係数PX/MXは143と最大のp-キシレン透過選択性を示した。
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