研究概要 |
二酸化炭素(CO2)が溶解した膨張有機液相での水素化反応を行い,CO2の役割・機能について研究した。対象とした反応基質は前年度のニトロベンゼンの結果を考慮して二官能性のニトロスチレンを選び,触媒としてチタニア担持白金触媒,溶媒として極性の異なるトルエンとエタノールを用いた。ニトロスチレンの水素化ではニトロ基に水素付加したビニルアニリン,ビニル基に水素付加したエチルニトロベンゼン,両基に水素付加したエチルアニリンが生成する。トルエンを溶媒とした場合,CO2圧力に殆ど関係なく,生成物として主にエチルニトロベンゼンが得られ,CO2がニトロ基の反応を抑制するという前年度の結果と一致した。しかし,エタノール溶媒ではCO2圧力で結果が異なっていた。低圧の場合CO2加圧の効果は現れず,ニトロ基が水素化された生成物ビニルアニリンも得られた。一方,高圧ではトルエンと同じCO2加圧の効果が認められた。有機基質,溶媒,CO2間の相互作用を調べるために,CO2加圧下の有機液相を全反射赤外分光法で調べた。その結果,トルエンではCO2分子とニトロ基の相互作用が認められたが,極性のエタノールでは小さいことが分った。これは反応基質とCO2分子の相互作用よりも極性溶媒分子との相互作用が起こり易いためと考えられる。そのためエタノール溶媒では加圧CO2の効果が小さいと推察された。この考えは分子動力学法による液相構造に関するモデル計算の結果とも一致した。膨張液相は反応基質へのCO2溶解度が小さいとき,あるいは固体基質を扱うとき有効な反応場となり得るが,溶媒は基質,溶媒,CO2間の相互作用を考慮して選択することが重要である。これらに加えてCO2を反応場/反応物とする有機合成反応も研究している。
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