研究概要 |
電源を切っても情報が保持される不揮発性メモリはデジタルカメラなどの記憶媒体として利用されるだけでなく,各種コンピュータシステムの省エネルギー化にも貢献するとして注目を集めている。現状ではフラッシュメモリが不揮発性メモリとして量産されているが,書込み速度が遅い,書込み回数に制約があるなどの問題を抱えている。強誘電体を利用したFeRAMは同じく不揮発性メモリでありながら,高速書換えが可能であること,書換えに要する電力が少なくて済むなどの特徴があり,次世代メモリとして期待されている。しかし,フラッシュメモリの代替えとなるには,同等の高集積化を達成せねばならず,そのためには強誘電体材料を高アスペクト比のトレンチ構造内にステップカバレッジ良く形成する必要がある。本研究では,FeRAMやDRAMなどのメモリデバイス用ナノキャパシタ構造を形成するために,超臨界二酸化炭素を利用した薄膜プロセスを構築し,次世代高集積化メモリデバイス作製へ展開することを目指している。平成22年度の研究では,これらのメモリデバイスの電極材料となるPtやRu薄膜の形成について検討を行った。Ru薄膜形成に関しては,原料と還元剤の他にアセトンを添加することによって良質な薄膜が形成可能であることを見出し,アスペクト比10のトレンチ内に均一に製膜可能であることを確認した。Pt薄膜形成に関しては,還元剤としてシクロヘキサンが有効であることを見出し,連続膜の形成に成功した。また,キャパシタへのコンタクト材料としてCu薄膜の形成に関しても検討を深め,CVDプロセスよりもカバレッジ良く製膜可能であることを示した。一方,高誘電体・強誘電体薄膜形成用超臨界流体反応器の設計を行い,次年度以降の研究に備えた。これらの酸化物薄膜の物性評価設備として,極微小リーク電流測定可能な電気測定系も構築した。
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