研究課題/領域番号 |
22360331
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
足立 元明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40100177)
|
研究分担者 |
津久井 茂樹 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40207353)
木下 卓也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90453141)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 固体酸化物燃料電池 / ナノ粒子 / 電解質膜 / 噴霧熱分解 / スピンコーティング |
研究概要 |
本研究では、申請者らが最近発案し、その開発に成功したカーボンナノ粒子添加噴霧熱分解法を用いて固体酸化物燃料電池材料ナノ粒子の合成を行い、合成した粒子を用いスピンコーティングによる固体酸化物燃料電池薄膜の形成を試みる。3年目のH24年度は、研究実施計画に基づき次の3点を実施した。 (1)スピンコーティングによるYSZ多孔質基板上へのナノ粒子膜形成をコーティング条件(分散液のナノ粒子濃度、液の滴下速度、コーターの回転速度、基板温度、コーティング時間)を種々に変えて行った。作製したナノ粒子膜の構造をSEMにより調べたところ、比較的均一な粒子堆積膜が形成された。 (2)作製したナノ粒子膜を種々条件(アニール温度、時間)でアニーリングし、膜の緻密化を行った。アニール後の膜の構造をSEMで、結晶相をXRDで調べたところ、XRDパターンはGDC膜であることを示したが、構造は膜中に多くの孔があいた多孔質膜であった。 (3)アニーリングによる膜の緻密化が不十分でたあたことから、予定していた電解質膜のイオン伝導性評価は行わず、(1)および(2)の実験を繰り返し、緻密性の高い膜を形成する条件を知らべた。 これら実験の結果、スピンコーティングではバインダーを入れずに行うため、ナノ粒子どおしの付着がよわく、空隙の大きな粒子堆積膜が形成されていることがわかった。このため、スピンコーティングにもちいるGDCナノ粒子分散液にバインダーを投入することとし、その実験の手始めとして、バインダーを用いて従来から行われている塗布法による膜(比較的厚い膜)形成を行うこととした。この実験によりナノ粒子を用いたときの緻密膜の作製条件を明らかにし、その情報に基づき、スピンコーティングによる薄膜形成を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
応募時の研究計画調書では①スピンコーティングによるナノ粒子堆積膜の作製、②ナノ粒子堆積膜のアニーリング、③電解質膜の特性評価を行い③の結果が思わしくないときには①にまで遡って検討を行い、その対策を講じることとしている。現状では③の状態で足踏みしているが、①~③を繰り返し行った結果、緻密な膜が形成できない原因を明らかにできた。今後、この遅れは取り戻すことができると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
Gd0.1Ce0.9O1.95ナノ粒子の合成方法が確立したが、スピンコーティングによる緻密なナノ粒子薄膜は作製できなかった。この原因を調べたところ、コーティング液(GDCナノ粒子得分散液)にバインダーを加えていなかったためであることがわかった。この結果を踏まえ、今後は次のように研究をすすめる。まず、従来の電解質膜作製法である塗布法により比較的厚い(約100μm)電解質膜の作製を行い、ナノ粒子膜の緻密化条件を明らかにした後、スピンコーティングによる薄膜(数μm)の作製に再チャレンジする。具体的には下記項目について検討する。 (1)塗布法によるナノ粒子膜形成:酸素極焼結体上に塗布法により、作成条件(分散液のナノ粒子濃度、液の塗布速度)を種々に変えてナノ粒子膜を形成する。 (2)ナノ粒子膜のアニーリング:(1)で作製したナノ粒子膜を種々の条件化(アニール温度、時間、雰囲気ガス)でアニールし、緻密な膜が形成される最適なアニール条件を求める。薄膜の構造はSEM観察により、アニール後の膜組成はXRDにより評価する。 (3)電解質膜の特性評価:(2)で作製した電解質薄膜のイオン伝導特性を交流インピーダンス測定装置により評価し、最も高い伝導度を与える粒子膜およびアニール条件を明らかにする。 (4)スピンコーティング法によるナノ粒子膜作製とアニーリング、イオン伝導度評価:酸素極焼結体上にスピンコーティング法により、作製条件(分散液のナノ粒子濃度、液の滴下速度、コーターの回転速度、基板温度、コーティング時間)を種々に変えてナノ粒子膜を形成する。上記(2)(3)で得られた最適な粒子膜およびアニール条件で電解質薄膜を作製する。スピンコーティング法の最適条件を見つけるためスピンコーティング条件を種々に変え(2)(3)を繰り返す。
|