研究課題/領域番号 |
22360334
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 和也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (50334313)
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キーワード | 金属水酸化物 / 固体触媒 / 有機合成 / 溶存状態制御 / 新反応開拓 |
研究概要 |
本提案研究では、以下の(i)および(ii)の順序に基づいた触媒設計を行い、構造の制御された活性点構造を有する不均一系触媒を創出することを目的とした。(i)金属の溶存種制御、(ii)制御された溶存金属種からの固定化あるいは沈殿法などのバルクの構造制御、により構造の制御された金属水酸化物や金属酸化物触媒を創出し、それらを用いたグリーン有機合成反応系の開発を行うことを目的とする。 本年度は、上記のように調製して、高表面積あるいは特殊なトンネル構造をもつマンガン酸化物を触媒とするこれまでにない新しい触媒反応の開発に成功した。具体的には、2×2ホランダイト聖マンガン酸化物(OMS-2)を用いると、アルコールとアンモニア水からの酸化的アミド合成というこれまでにない新反応を開発することができた。OMS-2を触媒として用いると、芳香族、脂肪族、ヘテロ原子を有する種々の1級アルコールからの対応するアミドが高収率で得られた。β-MnO_2、バーネサイト型MnO_2、スピネル型Mn_30_4などのマンガン酸化物やCo_3O_4、CeO_2などの酸化物ではアミドはほとんど得られなかった。また、OMS-2の原料であるKMnO_4やMnSO_4・H_2Oを用いても反応はほとんど進行しなかった。反応中にOMS-2をろ過により除去すると、反応はただちに停止した。このとき反応溶液へのマンガン種の溶出は観測されなかった。したがって、OMS-2では、固体触媒表面上でのみ反応が進行していることが明らかとなった。さらに、反応終了後回収したOMS-2触媒は活性選択性を低下させることなく再使用が可能であった。また、OMS-2を触媒として用いると、アミンの酸素化反応も効率よく進行することを見出した。 さらに、スズ-タングステン系の酸化物を用いるとリグノセルロース(麦わらやおがくず)から、ヘキソースやペントースを合成でき、さらにその脱水反応により有用なHMFを合成できることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画の通りに順調に進んでいる。それ以外に本プロジェクトを遂行しているなかで、偶然ではあるが、構造の規定されたマンガン酸化物を用いるとアルコールとアンモニア水からの酸化的アミド合成というこれまでにない新反応を実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究遂行中に新反応を偶然発見したが、その反応機構・必要な活性点構造などを検討していき、さらなる新反応開発へとフィードバックしていきたい。それ以外には、特に大きな研究計画の変更点はない。
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