研究概要 |
過酸化水素が生成蓄積するためには,酸素分子のカソードへの迅速な拡散と過酸化水素の迅速な脱離と水中への拡散が不可欠である.この状況は燃料電池法で実現できることを既に見いだしている.この反応場で熱活性化コバルト・ポルフィリン/カーボン電極触媒が作用する.コバルト・ポルフィリンはカーボンファイバー上で熱処理する過程で熱分解しながら活性化され,真の活性点を形成していると考えられる.この真の活性点のキャラクタリゼーションを行い,活性点構造を解明した。 コバルト・ポルフィリン担持カーボンファイバー触媒前駆体の熱活性化過程で脱離してくる無機成分あるいは有機化合物を直接マススペクトル(導入設備)に注入し,脱離生成物量と過酸化水素生成活性との相関を明らかにした。また同時にFT-IR(現有)を用いて中間状態での表面観察を行なった。さらに熱活性化過程における代表的なサンプルをXPS(本学所有)およびX線吸収スペクトルによる局所構造解析(高エネ研)による活性点構造を解析した。これらのキャラクタリゼーションの結果と過酸化水素生成活性を突き合わせながら総合的に考察することにより,過酸化水素生成活性点がコバルト・窒素・炭素化合部物,より具体的にはCoN_2Cx構造を形成していることを解明した。回転リング・ディスク電極を用いた電気化学的解析により,この活性点上で酸素分子は選択的に2電子還元され過酸化水素を生成していることを解明した。しかし,実際の過酸化水素合成反応では選択性は50%未満であり,大きく異なった。この原因について,速度論的解析を行った結果,蓄積した過酸化水素の逐次還元反応が原因であることがわかった。今後,触媒の改良により過酸化水素の逐次還元活性を抑えることが重要であることが明らかとなった。
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