研究概要 |
本年度は,有機保護剤の存在下での金属ナノ粒子の形成過程を,DXAFSスペクトル測定により「その場観察」を行い,さらにTEMおよびXPSなどの種々の分光法を組み合わせ金属ナノ粒子の形成機構,有機保護剤の役割の解明を進めた.まず,四つのチオアセチル基を同一方向に有する四座ポルフィリン保護剤を新規に設計合成した.この新規保護剤存在下,金イオンを溶液中で還元することによって金ナノ粒子を合成する過程を追跡した.得られた金ナノ粒子の粒径は,従来のアルカンチオール系保護剤を用いた場合と比較して小さく単分散であった.また,ポルフィリン保護剤の末端官能基をチオアセチル基からジスルフィド基に変化させることで,さらに小さく且つ粒径分布の狭い金ナノ粒子の合成を達成した.これらの結果とその場観察の結果から,保護剤の多座配位による金ナノ粒子表面の強い安定化と,末端官能基の違いによるS-Au結合の形成速度が金ナノ粒子の粒径に影響を与えることを示した.また,一般的な単座保護剤及び上記のポルフィリン存在下での金ナノ粒子の生成過程を従来の方法より高速なQuick XAFS分光法を用いてその場観察した.粒子生成初期段階に現れる小さな金クラスターを捉えることに世界で初めて成功し,粒子生成機構を提案した.一旦全ての金原子が小さな金クラスターを形成した後,クラスター同士が凝集することで粒子成長するという機構である.また,ポルフィリン保護剤を用いた検討から,保護剤の嵩高さと多座配位性が,初期に生じる金クラスターを捕捉する速度を遅くする一方で,その後の粒子成長を強く抑制することを提示した.併せて,Rhナノ粒子が酸化チタン上に光電析される機構を,Dispersive XAFS分光法を用いて明らかにした.すなわち,酸化チタン上で,一定の速度でRhイオンが還元され,約3mmのRhナノ粒子が一定の速度で出現することを見出した
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