研究概要 |
本年度は,溶液液における金属ナノ粒子生成機構並びに無機酸化物表面におけるナノ粒子形成機構について検討を行った. まず,ポリビニルピロリドンを保護剤としたポリオール還元法による塩化ロジウムからのRhナノ粒子生成機構について,Insitu時分割XAFSとICP-MSを用いて検討した.ナノ粒子生成はRh前駆体の濃度に対して一次反応であり,一定の大きさのRhナノ粒子が素早く連続的に生成し,相互に凝集することはないことが示唆された.即ち,前駆体の還元が律速段階であり,その後に起こる粒子成長は極めて迅速に進行し,一定の形のナノ粒子を生成することがわかった. また種々の雰囲下における熱処理によって,種々の金属酸化物上で金属の前駆体が分解し,白金ナノ粒子が形成する過程について,in-situ時分解XAFSと質量分析計を組み合わせ検討を行った.不活性雰囲気下では,前駆体の分解後,NH3やNO3-を還元剤として金属状態にまで還元された白金種と,担体の格子酸素に由来する酸素と結合した中間体が生成した.生成した中間体の安定性は担体によって大きく異なり,中間体の易還元性は同時に還元される中間体の数に影響を与え,結果として,粒子径分布に影響することが分かった. 還元雰囲気下では,担体の酸の強さが,還元初期における白金ナノ粒子の形成過程に影響を与えることを見出した.白金の還元は,前駆体に由来するHNO3と,担体上に担持されたPt(NH3)42+のNH3配位子が反応することで進行すると考えられ,担体の酸強度が強いほど,白金の電子が担体に吸引されるため,電子供与性であるNH3配位子と白金との相互作用が強くなり,Pt(NH3)42+の安定性が高まることで還元が進行しづらくなったものと推定した.これらの例の様に担体並びに雰囲気がナノ粒子形成過程に与える影響を明らかとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶液系,担持金属系のいずれについても時間分解XAFS測定を中心にナノ粒子形成過程の観察に成功しており,得られた結果を基に,ナノ粒子形成機構の提案も行っている.従って,概ね順緒に進展していると判断される.また,測定手法や検討を行っている「その場分析用セル」は,他の系にも応用可能で有り,今後様々な系に展開を図る予定で有る.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で溶液系について金およびロジウムナノ粒子の形成過程を明らかにした.また,担持金属系については,白金ナノ粒子を中心に検討を行ってきた.今後は,担持金属系について白金ナノ粒子と並行して担持系について金ナノ粒子ならびにRhナノ粒子についても検討を進める.ロジウムナノ粒子については,担体のSMSI効果の効果について予備的な検討を行ったが,今後さらに検討を進める.
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