次世代二次エネルギーとして期待される水素製造などにおいて反応を低温・高活性化するブレイクスルーが求められている。我々は非在来型プロセスである触媒層に電場を印加する電場触媒反応を用い、熱力学制約をうけにくい新規低温反応を確立することを狙った。主にメタンの水蒸気改質を対象とし、分光・速度論などの観点から解析を行い、電場の効果について検討を行った。 触媒はセリア系酸化物を主な担体とし、1wt%のPtやPd、Niを含浸法にて担持した。活性試験では固定床常圧流通式反応器に触媒80 mgを充填し、電場印加は触媒層上下に接するよう電極を設置し直流定電流制御で行った。DSOで電流電圧波形を記録し、酸素同位体と四重極質量分析計により生成物の定性・定量分析を行った。分圧依存性、温度依存性などについても詳細に検討し、アレニウスプロットからみかけ活性化エネルギーを求め、反応機構を詳細に検討した。 分圧変化試験により求めた反応次数から、在来型の触媒反応と電場触媒反応で比較すると、電場印加によりメタンの反応次数は小さく、水の反応次数は大きくなった。在来型の触媒反応の律速段階がメタンの解離吸着である点を踏まえると、電場によりメタンの解離吸着が促進されたと考えられる。電場触媒反応での水の反応次数が高温になるほど大きく増加する傾向を示し、電場による水の活性化が重要な鍵を握ることがわかった。電極間距離と電圧値には直線関係が見られ、電極間距離が増加するほど反応速度は増加する傾向を示し、電界強度は材料に依存し、電力とは相関しないことがわかった。よって触媒の部位ごとにかかる電界強度は、触媒の誘電率などで一義的に規定され、電極間距離によらず材料により一定であり、印加電圧は電場により活性化される触媒の量とほぼ同義であることが分かった。これらから、電場中での触媒反応の学理ついて明らかにし、応用展開を進めることが出来た。
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