研究概要 |
超好熱菌の耐熱性酵素遺伝子を発現した大腸菌や疎水性放線菌Rhodococcus opoacus B-4株の加熱処理細胞を用いて、glycerolからglycerol-3-phosphate、fructose 1,6-bisphosphateから2-deoxyribose-5-phosphate、2,2,2-trifluoroacetophenoneからα-(trifluoromethyl)-benzyl akoholなどが合成できることを確かめた。glycerolからのglycerol-3-phosphate(G3P)の生産には、PPKTによるpolyphosphate (polyP)とADPからのATP再生系を共役させた。これにより、高価なATPを多量に消費することなく、安価なpolyPからのリン酸基の供給を実現するとともに、高濃度のATPやADPの蓄積による酵素活性の阻害を避けることができた。2,2,2-trifluoroacetophenoneからのα-(trifluoromethyl)-benzyl alcoholの合成では、原料および生成物とも疎水性が高く水には溶けないことから、有機溶媒中で合成反応を行った。そのため、芳香族ケトンに作用する耐熱性のcarbonyl reductase (ADHT)を疎水性放線菌R.opacus B-4株で発現させた。R.opacus B-4株の形質転換体を加熱処理することによりADHTのみの酵素活性を有する死滅菌体を得た。R.opacus B-4株は細胞表層の疎水性が高く有機溶媒に良く懸濁するから、死滅菌体を直接原料の2,2,2-trifluoroacetophenoneに懸濁し合成反応を行わせることができた。
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