補酵素の再生系の開発は、工業レベルでの酵素利用において、非常に重要な課題である。すでに構築した超安定なATP再生系ではポリリン酸を原料にATPを再生する。また、本研究で構築するNAD(P)H再生系では亜リン酸を原料にNAD(P)Hを再生する。安全で安価な無機リン酸系分子で補酵素再生系を統一することによって、クリーンなバイオプロセスを目指す。 予備実験において取得されていた70℃で亜リン酸酸化活性を示すPTI株はPtxDを保持していないことが分かったため、新たにスクリーニングを行った。亜リン酸を唯一のリン源とする最少培地で45℃、60℃で単離を試みたところ、45℃で増殖し、亜リン酸依存的なNADH生成活性を示す4株が得られた。次に、得られた株からPtxD遺伝子の取得を試みた。PCRによる解析から、これらのptxDは既存のものとは異なる事が示唆されたため、保存ドメインを対象とした縮重PCRとインバースPCRによって全長遺伝子の取得に成功した。4株のptxDは全て同一であった。この遺伝子をpETベクターにクローニングし、大腸菌を用いて組換えPtxDを精製した。生化学的な解析を行ったところ、このPtxDは至適温度が50℃であることが分かった。これまでに野生型PtxDの中に50度で安定した活性を示すものは報告されておらず、計画通り新規の耐熱性PtxDの取得に成功した。
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