研究概要 |
昨年度までに耐熱性PtxD(RsPtxD)の取得およびRsPtxDを使ったNADH再生系の有効性をロイシンデヒドロゲナーゼによるL-tert-ロイシン合成反応との共役反応により実証した。H24年度は予定通り、RsPtxDを用いたデヒドロシキミ酸(DHSA)からのシキミ酸(SA)合成を行った。SAはシキミ酸デヒドロゲナーゼ(SkDH)によるNADPH依存的な不斉還元化反応によって生成する。RsPtxDはNADPに対して基質特異性を示さないため、まず部位特異的変異によりRsPtxDのNADPに対する特異性を向上させる試みを行った。NAD依存性デヒドロゲナーゼで高く保存されているNAD結合領域(ロスマンフォールドドメイン)のβ2シートC-末端領域に位置するアスパラギン酸残基はNADPとの結合に重要であることが知られている。そこで、この位置に相当するRsPtxDの175位のアスパラギン酸をアラニンへ、隣接する176位のプロリンをアルギニンに置換した変異体(RsPtxD-DM)を作成した。その結果、野生型に比べNADPに対するKmが0.042倍となり、NADPに対する特異性を大幅に向上させる事に成功した。次に、RsPtxD-DMとThermus thermophilus由来SkDHを共役させた反応系において、DHSA10 mM,亜リン酸15mM, NADP0.2 mMを含む反応液中で反応を行ったところ、約50分で反応を完結させることが可能であった。RsPtxD-DMによるNADPH再生系を使用しない場合は、SA収率がNADPH量に対して60%で反応が停止することから、その有効性が実証された。さらに、反応系の最適化を行い、100 mM DHSA, 0.2 mM NADP存在下で78.4 mMのSAが得られ、反応の効率化に有効である事を確認した。
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