研究課題/領域番号 |
22360348
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井嶋 博之 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (10274515)
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キーワード | 肝組織工学 / 再生医工学 / 増殖因子 / ゲル / 脱細胞化臓器 / 血管網 / 多孔質担体 / ヘパリン |
研究概要 |
細胞を包埋した増殖因子固定化ヒドロゲル充填スキャホールド培養系を用いた実用的な肝組織工学技術の開発を目指している。平成23年度は新規機能性基材開発と血管網を有する臓器鋳型を構築した。 (1)増殖因子固定化ヒドロゲルによる細胞包埋培養系の構築 (1)タグ付き増殖因子の開発 哺乳類肝臓由来のトランスグルタミナーゼ(tTGase)の基質配列を有する塩基性繊維が細胞増殖因子を開発し、現在同様な肝細胞増殖因子と血管内皮細胞増殖因子を開発中である。 (2)増殖因子固定化ヒドロゲルの作製と細胞培養による評価 ヘパリン導入コラーゲンを開発し、pH調整によるヒドロゲル形成と天然型の肝細胞増殖因子ならびに血管内皮細胞増殖因子の固定化能を実証した。本基材を用いて初代ラット肝細胞ならびに血管内皮細胞を培養し、肝細胞の肝特異的機能発現ならびに血管内皮細胞の増殖に対する有効性を実証した。さらに、脱細胞化肝臓を可溶化した新規機能性培養基材(D-ECM)を取得し、上記と同様の検討によりヘパリン導入コラーゲンと同等以上の良好な結果を得ることができた。 (2)脱細胞化スキャホールドを用いた血管内皮細胞の培養 平成22年度に構築した条件により脱細胞化ラット肝臓を作製し、ヒト臍帯静脈内皮細胞を還流培養することで脱細胞化肝臓内における血管網の内皮化を行った。さらに、この血管網周囲にゼラチンゲルを配置し、部位特異的な細胞配置が可能であることを示した。 (3)皮下移植による細胞包埋ヒドロゲルの機能性評価 ヘパリン導入基材やD-ECMからなる細胞包埋ヒドロゲルの皮下移植と部分肝切除術を組み合わせた検討を行い、肝組織再構築が促進された。特にD-ECMによる効果が期待された。しかしながら、D-ECMの取得法に対する最滴化の必要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書記載の内容をおおむね順調に遂行できている。ただし、タグ付き増殖因子の開発は当初計画の70%程度、細胞源に対する検討は当初計画の20%程度と遅延気味である。しかしながら、当初予定になかった脱細胞化肝臓の可溶化基材を新たに開発し、計画以上の性能を得ていることから、全体として上記自己評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
下記項目の実施により当初の目標を達成する。 (1)タグ付き各種増殖因子の開発を完了し、本研究課題に対する有効性を実証する。 (2)内皮化された脱細胞化臓器による肝臓再構築をし、その有効性をin vitroならびにexvivoにて実証する。 (3)ラット胎仔肝臓由来細胞を取得し、機能性肝組織再構築のための細胞源としての有効性について評価する。 (4)上記構造体をラットへ移植し、実用的肝組織工学構築技術としての有効性を実証する。
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