PARならびにLSADHの類縁酵素遺伝子の土壌メタゲノムからのPCR増幅を行い、活性や基質特異性が異なるPAR/LSADHの酵素ライブラリーの作成に成功したが、遺伝子の重複も考慮すると、その数は十分ではなかった。そこで、増幅条件の最適化、クローニングのハイスループット化を検討し、DNAポリメラーゼの種類やPCRの反応条件をチューニングした。またハイスループット化には、In-Fusion PCRクローニング法が遺伝子の取得と発現に有効であることを確認した。改良の結果、PARの類似遺伝子については、約300個程度のライブラリーが取得でき、その遺伝子解析を行った。さらに、得られたライブラリーのアミノ酸配列データと基質特異性及び熱安定性との相関データを取得した。その結果、基質特異性のみならず耐熱性に関与する数か所のアミノ酸残基を特定することができた。特に、その中の1か所の変異は熱安定性を著しく向上させることが判明した。 本研究の目標は、ランダムな変異とスクリーングという極めて手間のかかる作業を必要とする進化分子工学の手法を、メタゲノム由来の酵素遺伝子の配列情報(各々のアミノ酸配列と活性や安定性との相関関係)に代替し、汎用性の高い進化分子プログラムを開発する点にある。現在、PARのメタゲノムライブラリーから得た熱安定性データを基に新しいアルゴリズムの作成を行っており、今後これらを生体触媒プロセスの改良に用いる予定である。LSADHの酵素ライブラリーの作成は、条件設定がなかなか難しく、さらに検討を重ねている。
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