研究課題
加水分解酵素の逆反応によるアミド合成は、物質生産の観点から重要な検討課題であるが、本来の加水分解機能と比べて、通常、有機溶媒中における合成活性が低いため、十分な収率が得られない。本研究では、種々のナイロンオリゴマー分解変異酵素を用いて、高効率のアミド合成を可能とする触媒中心の形成要件について検討した。これまで、NylB'カルボン酸エステル分解酵素からのナイロンオリゴマー分解活性の高機能化では、G181D→H266Nによる適応歩行(タイプA変異)と、D370Y→R187S→F264Cによる適応歩行(タイプB変異)の2種類が存在することを確認しているが、前者ではアミド分解活性(水溶液中)と合成活性(有機溶媒中)がほぼ同等であった(合成/分解活性比≒1)。一方、後者の変異酵素では、分解活性のみを有し、合成活性は検出されなかった(合成/分解活性比<0.005)。生成物平衡濃度に影響を与える箇所として、触媒クレフト先端部に位置する187位に着目した。タイプA変異酵素のアルギニン(Arg187)を、合成オリゴヌクレオチドを用いた部位特異変異により、種々のアミノ酸に置換した。tert-ブチルアルコール中におけるアミド合成機能と加水分解機能の反応速度論解析を行った結果、変異酵素間の合成収率の変化は、主としてK_<cat>効果によるものであり、基質結合能(K_m値)は殆ど影響を受けないことが明らかとなった。さらに、アミド合成の触媒効率(K_<cat>/K_m)は、370位アミノ酸置換によって影響を受け、バリン置換によって最も高い触媒効率を示すことを見いだした。これらの変異酵素の立体構造解析を行った結果、アミド合成を高効率で触媒するため、触媒クレフト周辺の疎水性反応場形成(水排除効果および触媒部位の外部環境への遮蔽)が重要であると結論した。
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