研究概要 |
ナイロンの再資源化においては、副産物の原料への変換が重要な検討課題である。ナイロンオリゴマー分解菌Arthrobacter sp.KI72株が生産する6-アミノカプロン酸環状2量体(Acd)加水分解酵素(NylA)は、Acdに極めて特異性が高く、ε-カプロラクタム、6-アミノカプロン酸直鎖状2量体(Ald)には殆ど活性を示さない。これまでの研究により、Ser174,cisSer150,Lys72が触媒残基であることが分かっている。本年度はAcdの2カ所のアミド結合の内、加水分解を受けない側のアミド結合近傍に位置するAsn125,Cys316の変異体を用いて、Ald及び炭素数の異なる環状アミド(ω-ラウロラクタム,ω-オクタラクタム,ε-カプロラクタム)に対する分解機能を検討した。 変異型NylA発現株から粗酵素液を調製し、陰イオンクロマトグラフィーで精製後、Aldと各ラクタムの分解活性を測定した。その結果、Ald分解活性は、N125D,C316Dの2酵素では親型NylAに比べて40~60倍上昇することを見いだした。また、触媒効率(kcat/km)は60~70倍上昇し、125位、316位のAsp置換は新たにNylB機能を付与すると推定した。ε-カプロラクタム、ω-オクタラクタム分解活性は微弱であるものの、316位がPhe,Leu型の変異酵素で活性の付与・強化が示された。 一方、ω-ラウロラクタムに対する活性はC316L変異により、親型酵素の3倍に上昇したが、C316F変異により3%まで低下した。酵素・基質複合体の立体構造から、本酵素の基質認識について考察した。
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