研究課題
Arthrobacter sp.KI72のナイロン加水分解酵素(NylC)は、3量体以上の6-アミノカプロン酸オリゴマーをエンド型で分解する。同酵素は、αサブユニット(27kDa)とβサブユニット(9kDa)がヘテロ2 量体を形成し、さらに、これらが4分子会合した(αβ)4構造を有する。これまで、サブユニット界面に位置する4アミノ酸置換(D122G-H130Y-D36A-E263Q変異)により、親型NylCの熱変性Tm値が、52℃から88℃まで上昇することを見いだした。特に、D122G 置換が熱安定性に大きく影響することから、耐熱性が異なるVal, Arg, Lys変異酵素についてX線結晶構造解析を行った。その結果、1.05~1.2Åの高解像度の結晶構造の取得に成功した。得られた結果から、122位と近接するLys159(A鎖)-Glu115(B鎖)間の距離は、野生型では2.82Åとなっているが、耐熱性の高い酵素ほど、側鎖間の距離が近接するという現象が確認できた。さらに、野生型ではループのゆらぎにより、モノマーAの130位付近の電子密度が観察できないのに対し、耐熱性の高いGly酵素ではモノマーAの130位付近の電子密度が観察することができた。すなわち、122位の置換は、局所的な静電的安定化効果に加え、サブユニット界面において、ループの安定化に影響すると推定した。また、同ループ上に位置する137位においても、Ala, Phe, Trp置換により、耐熱性が大きく低下したことから、側鎖の大きさが構造の安定化に関係していると考えられた。さらに、NylCの自己分断機構を明らかにする為、部位特異的変異導入法により変異酵素を取得し、自己分断に関わるアミノ酸残基の特定と役割の推定を行った。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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