研究課題/領域番号 |
22360353
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村上 正秀 筑波大学, 名誉教授 (40111588)
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研究分担者 |
高田 卓 筑波大学, システム情報系, 助教 (30578109)
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キーワード | 航空宇宙工学 / 流体 / 宇宙科学 / 人工衛星 / 超流動 / 超流動乱流 / PIV法 / 量子化渦 |
研究概要 |
He IIの加熱による、理想超流動状態から超流動崩壊を経てのGoelter-Mellink伝熱状態への遷移、He II流れの超流動乱流への遷移と乱れ特性、さらに膜沸騰への遷移をターゲットとして実験的研究がなされた。さらに、PIV法とPTV法による超流動計測結果の見かけ上の矛盾を解明するため、同一粒子画像に対する両法による解析結果の比較検討を行った。 1.超流動乱流計測に用いられるPIV法(Particle Image Velocimetry)用のトレーサー粒子と量子化渦との干渉:粒子は粘性のある常流動成分に従うか、あるいは量子化渦核にトラップされて常流動成分流れに逆流することに加え、量子化渦群によって抵抗を受けて引きずられ常流動成分流速よりも減速されるものがあること、等が理論的に予測された(Sergeev & Barenghi J Low Temp Phys.157,2009)。我々の実験結果は、逆流粒子を捉えているものもあり、大筋でこの予測を支持するものであった。この理論研究論文では、さらに詳しく線形域と非線形域で異なる依存関係が示唆されたので、得られた広範な流速値に対する実験データに基づき定量的な詳細比較を行った。結果は、第9回国際PIVシンポジウム(Kobe, July 2011)において招待講演として発表された。 2.PIV/PTV法実験の準備の迅速化を目的とした装置改良:クライオスタットの真空断熱部の排気用のターボモレキュラーポンプシステムの導入により、昼夜無人運転が可能となり、真空排気に要する日数の大幅短縮が実現された。 3.熱カウンター流ジェットの超流動乱流特性のPIV計測:超流動乱流遷移、および同線形-非線形領域遷移への臨界条件、減衰則の計測。 4.He II加熱における沸騰への臨界加熱量について、落下塔を利用したマイクロ重力下で微小液頭圧状態下での実験を行い、データの蓄積に努めている。沸騰開始の同定のため、ヒーター細線に現れる蒸気界面を可視化画像エンハンス法により可視化して行う手法を発展させた。また、蒸気鞘の発達過程の計測を通してGoelter-Mellink伝熱状態での蒸気凝縮伝熱について調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.大震災による実験装置準備段階における遅れがあった。 2.PIV/PTV法用のトレーサー粒子と量子化渦とが強く干渉することが明らかになり、その解明が必要となった。ただし、この現象は、超流動乱流にとっての本質である量子化渦の振る舞いに関わるものであり、その解明は、今や本質的な研究課題となっており、積極的な取り組みを続けることにより既に成果が出始めている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初方針通り実験を進めるつもりである。加えて、上述したトレーサー粒子と量子化渦との干渉をテーマとして、超流動乱流にとっての本質である量子化渦の振る舞いの研究も追求して行くつもりである。
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