研究概要 |
平成24年度は,提案したジメチルエーテル(DME)を用いたアークジェット推進機の性能評価や,その推力増強モジュールの試作評価を行った. DMEアークジェット推進機に関しては,煤が電極に付着し作動が不安定になることが確認されたため,窒素ガスを混ぜることにより煤の付着を防ぐことを試みた.メッシュを用いた窒素-DME混合器を試作し,昨年度までに実験に供してきたアークジェット推進機を用いて推力測定実験を行った.この時の窒素の質量比率は,0~100%の範囲で変化させ,DMEと窒素のトータルの質量流量は50 mg/sで固定した.また,放電電流は,13, 20, 30Aで変化させた. 実験の結果,窒素の混合比率を50 %程度にすることにより,電極への煤の生成量を削減することができた.一方で,電極への煤の付着範囲が広がり,ノズルの膨張部にまで付着するようになった.性能は,窒素流量の増加により,放電電圧が降下し,結果放電電力が低下するため比推力は低くなる傾向にあった.以上のように,窒素を混合することにより性能が低下するものの,煤の生成量を抑制することができた. また,固体推進薬を用いた推力増強モジュールに関しては,DMEアークジェットの作動が必ずしも安定していないことから,レーザを熱源として代用する100 mN級の推力増強モジュールを試作した.昨年度に燃焼のOn/Offをレーザ加熱の開始と中断により制御できることを示したが,燃焼が不安定であり.レーザ発射口の移動速度と推進薬のサイズが適切ではなく,燃焼により推進薬が燃え尽きた後もレーザ照射を続け,作動を不安定にしていた.そこで,作動の安定化を目指し推進機を改良した.結果,燃焼は不安定であったが,推進薬が燃え尽きる前にレーザヘッドを移動させることができたことから,推進薬の利用効率向上への展望が開けた.
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