研究概要 |
第一に,精密・大規模なゴサマー多体構造物モデルの運動の高速な並列解析コードNEDA2.0を開発・改良し,(独)宇宙航空研究開発機構が2010年5月21日に打ち上げた,ソーラー電力セイル小型実証機IKAROSの軌道上挙動予測および運用結果解析に適用した.その結果,本研究による理論および解析手法が,大型ゴサマー構造の展開運動を伴う非線形大変形動力学を精度よく予測できることを実証した.第二に,膜面のしわの発生時および消滅時の変位と荷重を計測する実験系をくみ上げ,計測実験を実施した.そして,汎用有限要素法解析ソフトABAQUSを用いて,膜面の変形を計算し,実験結果と比較することにより,実験および計算の結果が妥当であることを確認した.また,直径1.8m,高さ1mの大型真空試験機を用いて,0.01Paの高真空下で膜面の展開時の運動をステレオ視計測する装置をくみ上げた.以上により,NEDA2.0,ABAQUS,膜のしわ計測,真空展開試験という,4つの研究ツールが揃い,本研究が目指すゴサマー多体力学の解構造の研究の準備が整った.また,解構造の必要な部分を保存する非線形のモデル低次元化法も構築した.この低次元化法の基礎ができたことで,実験や計算による解構造の解明とともに,それを利用したゴサマー宇宙構造物の設計・開発手法の構築の基礎ができた.以上により,本研究の最終目標である,解構造解析によるゴサマー多体構造物の構造・ダイナミクス解析理論の提供と将来のゴサマー宇宙構造物設計標準の構築に向けた基礎理論の構築の基盤が築かれた.また,これらの研究成果は,上述のIKAROSだけでなく,2012年に宇宙ステーションの日本の実験棟「きぼう」の船外プラットホームで実験予定の「宇宙インフレータブル構造の宇宙実証SIMPLE」の挙動予測にも適用するとともに,それらを含む研究成果を国際会議等で周知した.
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