研究概要 |
本研究では4つの課題を交付申請書の段階で掲げ,それらの課題を解決すべく研究を行っている.当該年度はこれら4つの課題に対し,以下の成果を得た.まず,課題1「精密・大規模なゴサマー多体構造物モデルの運動の高速な並列解析コードの開発」については,前年度までに開発した並列解析コードNEDA2.0の大部分(領域分割型並列化部分)を完成させた.次に,課題2「精緻で汎用性のある地上実験法と実験結果に基づく数値解析の精度評価法の提案」については,前年度に構築した高真空下での1m級ゴサマー多体構造物の高速展開/姿勢マヌーバのダイナミクスの実験系を用いて膜面の展開・展張実験を行った.次に,課題3「分岐構造が系全体に与える影響を考慮した数値解析の誤差評価理論の構築」については,ある時点で分岐した解がその後どう時間発展してゆくかを高速に予測する手法を定式化した.また,高分子膜の引張試験結果および非線形汎用FEMコードABAQUSによる解析結果をもとに,ゴサマー構造特有の非線形な応力一歪特性の定式化手法の改善を行った.また,静解析で解析解を得られるものについては,数値解と解析解とを比較することでメッシュ分割による誤差の影響を評価する手順をまとめた.そして,課題4「解構造の必要な部分を保存するモデル低次元化法の構築」については,低次元化手法,ならびに,課題3で定式化した誤差評価理論を低次元化手法の誤差評価に用いて,低次元化手法の精度が妥当であることを示した.以上の成果の一部は国際会議で発表し,周知した.これにより,実際の宇宙機の設計・開発にも耐えうる低次元化手法を構築できた.以上により,本研究の最終目標である,解構造解析によるゴサマー多体構造物の構造・ダイナミクス解析理論の提供と将来のゴサマー宇宙構造物設計標準の構築に向けた基礎理論の構築に必要となる研究成果の主たる部分が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4つの課題のうち,課題1の主要部分は既に宇宙実証をしており,その他の部分も計画以上の成果を得られている.課題2,4についても,それぞれ実験装置や解析コードは開発できており,成果も既に出てきており,計画以上である.残る課題3については,本研究の終了はでまだ1年を残していることを考えれば順調ではあるが,現時点では分岐解全体の範囲や誤差の上限など得られた解の全体的な評価手法の確立にまでには至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
4つの課題のうち,課題1,2,4についてはこれまでの成果を発展させることで当初以上の成果を見込める.そこで,残る課題3の分岐解全体の配位空間内での到達可能範囲,並びに,メッシュ分割や桁落ち等による誤差範囲の評価について,次年度に集中的に研究を行って成果を出したいと考えている.既に静解析については結果を出しているので,それを動解析に拡張することで,成果を出すことは可能である.
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