研究概要 |
本研究は,予冷ターボジェットエンジンに関わる非定常現象をモデル化し,システム全系の非定常シミュレータを構築することを目的としている.以下に,研究成果を示す.概ね予定通りに進んでいる. (1)エアインテークの非定常特性に関する実験および数値解析 超音速風洞実験により,亜臨界状態からのバズおよび超臨界状態からのバズを観測し,バズ周波数がインテークに流入・流出する流量のバランスに係わることを発見した.また,インテークバズをモデル化し,ボリュームジャンクション法によって解析した.さらに,2次元圧縮粘性数値解析を行い,定性的,定量的に実験値と一致することを確認し,リミットサイクルを描画した.後部ダクトの大きさが,バズの発生限界に関連していることがわかった. (2)極低温流体の流動特性に関する研究 縦置き型の極低温流動試験装置を設計・製作し,液体窒素を用いた試験を実施した.テストセクション部を電熱線で加熱し,液体窒素を蒸発させ,気液二相流をつくる.下流側には,静電容量型ボイド率計および高速度カメラによるステレオ撮影によって,ボイド率および流速を計測した.今年度は,市販のCメータの代わりに,コンパクトな計測回路を自作した.また,平行して取得した温度計測値とあわせ,液体窒素の管内伝熱特性を表す実験式を導いた.ボイド率計測の自動化に向け,画像解析するプログラムの構築を進めた. (3)エンジン非定常シミュレータの構築 予冷ターボの実験データを用いて各要素をモデル化し,定常状態におけるエンジンの性能を評価することができた.また,液体水素の熱物性モデルを組込むことにより,液体燃料での性能評価を行なった.さらに,小型エンジンを対象とし,一定ゲイン拡張カルマンフィルタによる性能推定プログラムを作成し(パラメタは現在回転数のみ),実験値とカルマンフィルタ推定値の違いに関して比較・考察を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,小型ターボエンジン用シミュレータがほぼ完成し,実験との比較を行なうことができた.インテークバズに関して,風洞実験および数値解析の両面から検討し,バズからの復帰方法を実証するとともにバズ発生メカニズムの理解を深め,非定常シミュレータに組込む準備ができた.静電容量型ボイド率計等の計測技術を概ね確立し,本研究のみならずロケットエンジン等に適用する話が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
研究の大筋に関しては変更を行わないが,気液二相流実験に関して当初と少し方針が変更されることとなった.本研究で開発を行なって来た静電容量型ボイド率計が,予想以上に高精度で計測することが可能であることがわかったため,JAXAのロケットエンジン開発に適用できないかという話が進んでいる.そこで,搭載型のボイド率計の開発に重点を置き,精度および信頼性の確認を行なっていくこととした.
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