研究課題/領域番号 |
22360359
|
研究機関 | 愛知工科大学 |
研究代表者 |
中谷 一郎 愛知工科大学, 工学部, 教授 (40150049)
|
研究分担者 |
大西 正敏 愛知工科大学, 工学部, 教授 (50410882)
茅根 直樹 愛知工科大学, 工学部, 教授 (60410883)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 月・惑星探査 / ローバ / ロッカー・ボギー方式 / レゴリス / 不整地走行 |
研究概要 |
NASA(米国)ではすでに火星ローバ(Curiosity)を用いた本格的な火星探査が進行中である。中国も月探査計画を精力的に進めている。わが国では、「はやぶさ」による小惑星の探査、「かぐや」による月探査を実施し、世界水準を超える成果を得ているが、月・惑星に着陸した後に重要な役割を担う、移動を伴う探査手段(ローバ)技術はまだ確立していない。 本年度は4年計画の研究の3年目にあたり、目標は、昨年度までに試作、走行実験をした月面ローバモデル(LUBOT-2)を評価して、サスペンション機構を洗練させることにあった。 前年度試作したLUBOT-2のパンタグラフ・サスペンションは、フィールドテストの結果は良好であり、十分実用に耐えることが実証された。かつ地球上での民生応用の可能性が実証されたため、特許申請を行った。しかし、繰り返し行った走行テストの結果、サスペンションの動作範囲に改良の余地があることが判明した。その解析結果に基づき、サスペンション機構を見直し、改良型としてダブル・ボギー方式の8輪月面ローバを提案し、そのモデル(LUBOT-3)の設計、解析、試作を行った。本方式は、片側4輪を対称な2組のボギーで支持し、中央の車輪が側面図では、平面では重なって見える位置に配置した。これにより、前進、後進が両ボギーに関して対称でありながら、独立に傾斜するため、不整地での走行特性がすぐれている。約30度の傾斜をもち、凹凸に富み、かつ大変滑りやすい土壌で走行試験を実施し、その性能を確認することができた。また中央の2輪が側面から視て重なっているため、ステアリングのアクチュエータが前輪、後輪のみであっても比較的容易にカーブに沿った走行が可能であることが示された。 また、本モデルに搭載する軽量マニピュレータの基本構造につき検討を実施し、小型・軽量なスカラタイプ方式を有力候補として検討を継続することとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に研究開発を予定していた月面ローバのサスペンション系に関して次のような成果を得ることができた。 まず、平成23年度試作したLUBOT-2のパンタグラフ・サスペンションの、屋外での走行テストの結果が良好であることを確認した。かつ、必ずしも月や惑星の走行に限らず、広く地球上での民生用(たとえば車椅子、階段を昇降する荷物搬送車用など)にも応用の可能性が判明したため、特許申請を行うことができた。また屋外不整地での走行テストの結果、サスペンションの動作範囲に改良の余地があることが判明し、サスペンション機構を見直し、改良型としてダブル・ボギー方式の8輪月面ローバを提案することができた。また、そのモデル(LUBOT-3)の設計、解析、試作を完了した。本方式は、片側4輪を対称な2組のボギーで支持し、中央の車輪が側面図では、平面では重なって見える位置に配置した。これにより、前進、後進が両ボギーに関して対称でありながら、独立に傾斜するため、不整地での走行特性がすぐれている。約30度の傾斜をもち、凹凸に富み、かつ大変滑りやすい土壌で走行試験を実施し、その機能および性能を確認することができた。また中央の2輪が側面から視て重なっているため、ステアリングのアクチュエータが前輪、後輪のみであっても比較的容易にカーブに沿った走行が可能であることが示された。 さらに、本モデルに搭載する軽量マニピュレータの基本構造につき検討を実施し、小型・軽量なスカラタイプ方式を有力候補として検討を継続することとした。
|
今後の研究の推進方策 |
月面ローバのフィールドテスト(砂丘などレゴリス類似環境の得られる場所で)をさらに進めて、問題点の洗い出しとその解決方法の検討を通して、技術の洗練化を図る。フィールドテストの候補地としては、静岡県の中田島砂丘が有力である。 またローバ搭載マニピュレータの小型化、軽量化、低消費電力化を図り、実際のロケットに搭載する場合のペイロードに対する厳しい重量制約条件を充たすように工夫する。 一方、数秒の電波伝搬遅れ時間を伴う、地球局からの遠隔制御を行うためのセミ・自律運用方式を洗練させて、実用化を図る。セミ・自律運用方式では運用はマクロ命令でローバの操縦およびマニピュレータの制御を実施することにより、運用者のワークロードを軽減することを狙う。そのためには、運用ソフトに一定のインテリジェンスを導入して、与えられたマクロ命令を、具体的なミクロ命令に落とす必要がある。これは、必ずしもローバの限られた処理リソースで行う必要はなく、地球局のプロセッサによる処理と、ローバ搭載プロセッサの最適な分担配分を検討するとともにそれをソフトウェアとして実装し、ハードウェアと組み合わせた統合運用シミュレーションを行う。 このシミュレーションにより、洗い出された問題点を改善することにより、トータルで洗練されたシステムの実現を図る。 これらの結果を論文にまとめ、学会、展示会等で外部に発信するとともに、JAXAの担当部局と連絡を密にして、「かぐや-2」などで予定されている実際の着陸ミッションを想定した現実的なパラメータ設定を検討する。
|