研究概要 |
本研究では、ホールスラスタにおいて3,000秒以上の高比推力と10,000時間以上の長作動寿命を同時に達成するために、性能測定実験、プラズマ物理量測定実験、寿命診断実験とプラズマ粒子法による数値計算を併用し、1.加速チャネルの材質を変更し壁近傍のシースプラズマ特性を変化させる、2.壁近傍の印加磁場の特性を変化させることによりイオンのチャネル壁面衝突を極端に防ぐことができる最適なイオン加速状態を実現することを目指した。 1. ロシアSPT100と同じ形状を持つホールスラスタを設計・製作した。これまでの実験結果とプラズマ流れ場の数値計算を参考にし、電力レベル1~2kWのスラスタを設計した。加速チャネルの材質、陽極形状・位置は変更可能とし、さらに磁場形状・強度は補助磁場コイルを複数配置し自由に変化させた。 2. 推進剤にキセノンを用いて、放電電圧(200~1,200V(比推力3,000秒以上達成可能))と推進剤質量流量をパラメータとして変化させ、推力、放電電流、加速チャネル損耗量を測定した。得られた結果より、比推力、推進効率を見積もった。加速チャネルの材質(BN, BNAIN, BNAlO_2,AlN, Al_2O_3に変更、成分の傾斜機能化)と磁場形状・強度を変え、それらの最適条件を調べた。 3. 得られた結果から、ホールスラスタ放電室内部、特に加速チャネル壁近傍、及び下流の噴出流の状態を考察しプラズマ生成、イオン加速過程を推定すると共に、それらの結果と推進性能・加速チャネル損耗特性との相関関係を検討した。定量的な検討を十分行うと共に、高比推力化、長寿命化のための最適なイオン加速過程が実現できる作動条件を探索した。
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