平成22年度はまず、深海環境も含めた海洋環境での複合計測において求められる精度、連続計測期間及び計測頻度に関して、特にpH計測について整理し、本研究で開発する多項目複合計測センサの基本的な設計要件について決定した。また、小型の自律型海中ロボット等への搭載を可能とする大きさ・形状などの条件を整理した。その結果、電源、データロガー等の機能を全て有し、8時間程度の連続計測が可能な「スタンドアロン型」のセンサ開発を進めることとした。続いて、深海環境を含めた極限的な海洋環境における使用を想定して、高感度CMOS型ISFETの高圧・低温環境における基礎的な特性を評価し、6000mまでの深海環境でISFETが使用可能であることを実証した。また、現場における校正、サンプル前処理を可能とするためのオンチップバルブを集積化したシリコーンゴム製マイクロ流体デバイス及びそれを駆動するための電気浸透流ポンプなどを応用した小型送液ユニットの設計・製作を行い、実際にISFETに搭載し性能を評価した。その結果、2種類のpH標準液を用いた現場校正及びそれと並行した連続pH計測が可能であることを実証した。最後に、高感度CMOS型ISFETについて、既存の電装・制御系を収納可能な耐圧容器を製作した上で無人海中探査機に搭載可能なプロトタイブ装置を作成し、スタンドアロン動作が可能であることを確認した。また、作成したプロトタイプ装置の試験を行うため、(独)海洋研究開発機構の公募研究航海へ応募し、平成23年度9月の実施予定で採択された。
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