本年度は、昨年度までに高感度CMOS型ISFETとマイクロ流体デバイスを集積化することで完成させた、プロトタイプ型pHセンサを用いて、1)複数素子を用いた高感度差分計測、2)マイクロ流体デバイスの高機能化、3)複数のpHセンサシステムの同時運用による信頼性の向上、及び4)現場海域における試験運用を通した1)~3)の性能評価を実施した。また、5)CMOS型ISFETを用いたpCO2計測に関する基礎検討を行った。 1)については、2つの計測部を有するCMOS型ISFETとマイクロ流体デバイスを組み合わせることで、異なるサンプルを同時に計測し、その差分を高感度に検出することが可能な装置システムを構成した。2)については、塩化物イオン選択性電極からなる参照電極をその一部とする新たなシリコーンゴム製マイクロ流体デバイスを試作・改良し、さらにDCモータ駆動のマイクロポンプと組み合わせることで機能の向上を実現した。3)については、プロトタイプ型センサシステムを2系統直列もしくは並列に接続して同時運用することが可能なシステムを構築した。4)については、独立行政法人海洋研究開発機構の「よこすか」「しんかい6500」を用いた研究航海において、南西諸島海海域伊平屋熱水サイトにおいて実海域試験を実施した。その際、しんかい6500の右舷・左舷からサンプルをシステムに導き、pHの差分計測を実施した。その結果、ポンプ由来のノイズが測定に影響を及ぼし、分解能等については改善の余地が認められたが、低pHの熱水に由来する異常値をリアルタイムに検出することに成功した。5)については、pHに加えて、多様な対象を計測することができる多項目同時計測ISFETセンサを実現するための、ガス交換膜の固定法などについて検討を行い、実現が可能であることを確認した。
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