研究課題/領域番号 |
22360367
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阿部 晃久 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (50221726)
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研究分担者 |
宋 明良 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (20314502)
西尾 茂 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (30208136)
三村 治夫 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (90190727)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 船舶バラスト水 / 衝撃波殺菌 / 微小気泡 / 衝撃波 / 衝撃波生成装置 |
研究概要 |
本年度は、船上のエネルギー源として主機や発電機からの排ガスを利用した衝撃波発生装置による水中衝撃波生成を目指し、衝撃波発生装置の駆動部の理論解析を実施した。本装置では、永久磁石を用いた高速駆動バルブを独自に開発し、その性能を評価するために、実験計測と一次元理論解析によるバルブの運動方程式を解いた。実験結果から、数種類の初期高圧室圧力値に対して、磁石補助機構が適切に作動し、磁石を使用しない場合に比較してバルブの開口時間を約30%短縮させる結果が得られた。また、理論解析結果は実験結果を良く模擬できた。理論解析結果から、初期高圧室圧力が低い場合に、磁力の効果が顕著になり、初期高圧室圧力が増加するに従って磁力の効果よりも流路断面積の変化に伴う効果が顕著になる傾向が示された。また、本装置における高速駆動バルブの加速は、衝撃波管入口部でピークを示すことが予測され、最適な条件で作動していることが示唆された。また、ピストン弁前後の圧力変化によって装置内部でのピストン弁の衝突破損を防ぐ効果も現れていることがわかった。一方、実際に生成させた衝撃波の圧力変動の計測から、衝撃波面前方にスライド開口もしくはピストン弁と装置内壁間の隙間からの高圧ガスの漏れに由来した擾乱による先行圧力波伝播が確認され、弁からの高圧気体漏れの防止の必要性が明らかとなった。しかしながら、本装置により十分強い衝撃圧を生成できることが確認されたことから、高速駆動バルブによる高圧気体を用いた衝撃圧生成に成功したと判断し、今後、この衝撃圧を利用する水中衝撃波の生成実験に展開できる段階に到達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、高圧ガス駆動の無隔膜衝撃波管の作製の後、新たな水中衝撃波生成実験にとりかかる予定であったが、新しい磁力補助機構を搭載した無隔膜衝撃波管の駆動部の数値予測の検証のための追加実験を実施したため、全体のスケジュールが遅れた。本装置を用いた新しい水中衝撃波生成実験のための準備まで到達できたが、実施に至らず年度末を迎えた。次年度に遅れを取り戻すべく早急に実験を開始する予定である。一方、マイクロバブルと衝撃波の干渉現象を模擬するために進めている数値シミュレーション研究については、昨年度、本研究で構築したゴーストフルード法を取り入れた衝撃波と気泡の二次元干渉シミュレーションコードに問題が発見され、その修正に終始し、予定していた研究の進展が遅れた。本件についても、次年度早々、遅れを取り戻すべく研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
本技術の船舶上での実用化のためには、低ランニングコストと低メンテナンスコストを計る必要がある。そのため最も大きな課題は、従来の放電や爆薬等による水中衝撃波生成法とは異なる方法で、いかに安く安全に水中衝撃波を生成させることができるかにある。本研究では、船舶の主機や発電機などで発生する排気ガスを利用した水中衝撃波の生成に取組み、磁力の補助機構を導入した新しい無隔膜衝撃波管を製作し、実験および理論解析の観点から性能評価まで終えたことから、今後は、本装置を用いて、新しい水中衝撃波の生成方法の確立に取組む。すなわち、高圧ガス駆動衝撃波装置と弾性チューブを用いた水中衝撃波生成実験に着手し、マイクロバブル運動を誘起できる水中衝撃圧の生成可能性について実験的に検証を行う。その際に、可視化実験、圧力計測実験等により、水中衝撃波の生成・伝播挙動を把握し、生成衝撃波による微小気泡運動の誘起条件の確認、衝撃殺菌効果の実証実験の実施まで進めたいと考えている。 一方、数値シミュレーションによる研究ついては、昨年度、本研究で構築したゴーストフルード法を取り入れた衝撃波と気泡の二次元干渉シミュレーションコードに問題が発見され、その修正に終始し、予定していた研究の進展が遅れたため、遅れを取り戻すべく改めて以下の計画を実施する予定である。具体的には、気泡と衝撃波干渉計算への表面張力モデルの導入と効果の確認を行い、二次元計算における気泡運動の実験結果との比較検討、二次元計算による複数個の気泡と衝撃波の干渉に注力する予定である。本年度はシミュレーション精度の向上を図り、実験データや理論解析解との比較などから精度の評価も行いたい。
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