研究概要 |
本研究は,船舶用ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(PM)を処理する,電気集じんシステム(ESP)を構築し,実用化を計ることを目的とした。従来の二段式ESPを基本構造とした船舶用ESPの開発を行った結果,高風速および高粒子濃度条件下における再飛散の発生のため,その性能はいまだ十分とは言えない。 そこで,再飛散現象を粒子捕集に利用した新しい構造である二重シリンダ型ESPの概念を考案した。この方式における過去の試作や実験例は見当たらず,その有効性も全く不明であった。本年度では,二重シリンダ型ESP内における再飛散粒子の軌道に関してシミュレーション解析を行い,再飛散粒子の再捕集の可能性と再捕集プロセスについて検討した。その結果,以下のことが明らかとなった。 (1)圧力差によりホール電極開口部において,帯電空間から捕集空間へ気流が発生する。 (2)帯電空間に比べ捕集空間の風速は約1/3以下となる。このことから,二重シリンダESP内では,高風速域の帯電空間と低風速域の捕集空間を併せ持つ。 (3)帯電した浮遊粒子は,ホール電極表面に捕集される。 (4)再飛散粒子はホール電極開口部近傍の気流の影響によって,捕集空間へ誘導される。 以上の結果から,二重シリンダ構造とすることで,再飛散粒子を低風速域の捕集空間へ誘導できる可能性が明らかとなった。 次に,二重シリンダ構造としたESPを作製し,実排ガスにより二重シリンダ型ESPの性能評価を行った。その結果以下の知見を得た。 (1)二重シリンダ型ESPではホール電極を使用することで,再飛散現象を抑制し100nm以下の粒径の集じん率が向上した。 (2)パンチング電極の開口率が大きいほど集じん率は高くなる傾向があり,孔径の大きさにはあまり影響されない。 以上の成果は学術雑誌に掲載し,学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
船舶用ディーゼルエンジンから排出されるPMを効率良く処理する電気集じんシステム(ESP)を構築するため,放電部と集じん部が分離した2段式ESPを検討した。その結果,高風速および高粒子濃度条件下における再飛散の発生のため,集じん性能は十分ではないことが分かった。そこで,再飛散を抑制する二重シリンダ型ESPを開発し,シミュレーション解析により再飛散粒子の再捕集について検討し,二重シリンダ型ESPの有効性を確認した。また,実ガスを使用しホール電極の形状と集じん特性を確認し,実用化に向けた準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
二重シリンダ型ESPの実用化のため,長時間稼動による集じん特性の検討を行う。また,捕集された粒子を放電で発生するオゾンにより酸化燃焼させるため,PM量と燃焼に必要なオゾン量の関係を解析し,電極上の捕集粒子を洗浄せずにESPの長時間稼働が可能となる放電条件を抽出する。
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