22年度は基礎実験として海水循環型の鋼材浸漬実験装置を製作した。実験対象の鋼材として、試験片(寸法:20×9×6mm)と試験板(寸法300×210×0.5mm)の2種類を作成した。(1)オゾン含有海水への鋼材の浸漬時間と皮膜厚さの関係について調べた。実験は、海水のみとオゾン濃度2.0ppm含有海水に各試験材を1週間、2週間、1ヶ月間、3ヶ月間、5ヶ月間浸漬して行った。その結果、オゾン含有海水に長時間浸漬しても浸漬時間に関係なく、皮膜厚さは約20μmであることが解った。(2)防食皮膜の耐久性を調べる実験では、最初にオゾン含有海水に試験片を浸漬し試験片表面に一旦皮膜が生成しても、海水のみの水槽に皮膜の生成した試験片を浸漬した場合、皮膜の効果が無くなり腐食が促進されること、一方最初に海水のみに浸漬した試験片をオゾン含有海水に浸漬するとオゾンにより防食効果が現れ、腐食しにくくなることが解った。(3)熱交換器のプレートを模擬した試験板の浸漬実験では、表面観察からオゾン濃度0.1ppmではまったく防食効果がないこと、3.6ppmと2.0ppmの比較では3.6ppmの方がより防食効果があること、オゾン含有海水が静止状態よりも流水の方が防食効果があることが解った。(4)水温(20℃と35℃)と皮膜生成の関係を調べる実験では、オゾン海水の場合は水温の影響を受けず皮膜生成により質量低減率に差はなかったが、海水のみの場合は温度が高い方が腐食が早く質量低減率が大きいことが解った。(5)また、一般に言われている海水中のオゾン半減期5.8秒は、常時新しい海水中で言えることであり、海水循環型の実験では、オゾンが海水中の臭素と結合することから、オゾンの半減期は3~4時間であることが解った。
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