研究概要 |
地下深部に貯留された二酸化炭素の流動を高精度傾斜計を用いて高精度でモニタリングする方法を開発するために,本研究では,多孔質弾性理論における各種弾性定数を実験的に明らかにすることを目的としている.平成23年度は,昨年度開発した深度2,000m相当の容量を有する三軸圧縮試験装置を用いて,来待砂岩および稲田花崗岩について,排水および非排水の三軸圧縮試験を実施し,多孔質弾性体の弾性定数(通常のヤング率,通常のポアソン比,非排水ポアソン比,非排水体積弾性率,Skempton係数など)を実験的に求めた. 平成23年度に得られた主な結果は以下のとおりである. 1.開発した試験装置を用いて,金属試験片に対し一連の三軸圧縮試験を行い,間隙を有さない試験片に対しても非排水状態を実現できることを確認した.また,本試験装置の非排水条件における封圧に対する間隙水圧の変動特性を明らかにし,同結果を岩石に対する測定値から差し引くことで,スケンプトン係数の測定精度を向上できることが分かった. 2.来待砂岩および稲田花崗岩について,排水および非排水の三軸圧縮試験を実施し,多孔質弾性パラメータを算出するために必要な間隙水圧,体積ひずみの変化を得た.得られた多孔質弾性パラメータの値は,類似した岩石に対して知られている値と調和的であったが,測定値の信頼性を向上させるために,十分な再現性を得ることが今後の課題である. 3.低透水性の稲田花崗岩に対して間隙水圧を増加させた場合,間隙水圧が不均一になる過渡現象により,体積ひずみが収束方向と逆方向に一旦変化する挙動が観察された.また,間隙水圧の経時変化から,多孔質弾性パラメータを精度良く求めるために必要な間隙水圧の緩和時間の指標が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度までに開発した試験装置を用いて,引き続き来待砂岩および稲田花崗岩に対する排水・非排水三軸圧縮試験を行い,多孔質弾性パラメータの測定を行うとともに,得られた値の妥当性について検証を行う.また,各種多孔質弾性パラメータに及ぼす封圧および間隙水圧の影響を評価し,各種弾性定数の応力依存性を明らかにする.
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