平成22年度は、原位置で硝酸イオン(NO_3^-)により汚染された地下水または土壌を水道原水に使用できるレベルにまで浄化することを想定し、原位置浄化技術である動電学的土壌浄化法と反応性バリア工法を組み合わせた動電型反応性バリアシステムを構築し、硝酸イオンをより無害なアンモニウムイオン(NH_4^+)に還元することを目的として、還元剤として0価鉄粉(Fe0)を選択し、バッチ試験により固液比、水相pH、そして水相中の第一鉄イオン(Fe^<2+>)濃度が0価鉄粉による硝酸イオンの還元に与える影響を評価した。さらに、硝酸イオンをアンモニウムイオンに還元する還元剤として0価鉄粉を使用し、動電型反応性バリア実験装置を使用して0価鉄粉の含有割合と陽極槽のpHが硝酸イオンの還元効率に与える影響について検討を実施した。研究を遂行することにより以下のことを明らかにすることができた。 (1)0価鉄粉は硝酸イオンの還元剤として有効であることが確認されたが、その還元効率は固液比や初期水相pHにより大きく異なる。 (2)0価鉄粉による硝酸イオンの還元は初期水相pHが低いほうが促進される。 (3)鉄(0価鉄粉または第一鉄イオン)と硝酸イオンの反応生成物をXRDで分析した結果、0価鉄粉の表面に生成された黒色の反応生成物は、マグネタイトであることを明らかにした。 (4)第一鉄イオンを水相に供給することで硝酸イオンの還元が促進された。また、その主な電子供給源は第一鉄イオンではなく0価鉄粉であることを明らかにした。 (5)動電型反応性バリアシステムを構築し、反応性バリアにおける0価鉄粉の含有割合と陽極槽のpHが硝酸イオンの還元効率に与える影響を検討し、0価鉄粉の含有割合も陽極槽のpHも硝酸イオンの還元効率に大きく影響することを明らかにした。
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