研究課題/領域番号 |
22360380
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
新苗 正和 山口大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50228128)
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キーワード | 土壌汚染 / 地下水汚染 / 動電学 / 反応性バリア / 還元 / 六価クロム |
研究概要 |
平成23年度は、「動電学的反応性バリアシステム」を六価クロムで汚染された土壌・地下水に適用するための基本データを取得することを目的として、六価クロムを三価クロムに還元するために用いる還元材として0価鉄粉(FeO)、マグネタイト(Fe_3O_4)および活性炭を選択し、バッチ試験により還元材濃度、水相pH、そして水相中の第一鉄イオン(Fe^<2+>)が六価クロムの浄化処理に与える影響を評価した。検討を通じて得られた知見を以下にまとめる。 1.六価クロムを還元するにあたり還元剤として0価鉄粉(FeO)とマグネタイト(Fe_3O_4)を検討した結果から得られた知見として、 (1)水相の初期pHの低い方が還元作用は促進した。 (2)0価鉄粉、マグネタイトともに添加量を増加するほど六価クロムに対する還元作用は促進した。また、還元された三価クロムを反応性バリア内で不動態化し、固定できることを明らかにした。 (3)0価鉄粉からは第一鉄イオンを高濃度で水溶液中に溶出したのに対し、マグネタイトからの第一鉄イオンの溶出はほとんどなかった。これは、0価鉄粉を用いた場合、溶出した第一鉄イオンが反応性バリア内から陰極井戸に向かって移動し、その過程で六価クロムを還元し反応性バリア外でクロムを固定することになり、クロムを反応性バリア内のみに固定することができない。 以上得られた知見より、土壌の酸性化を伴う動電学的反応性バリア法に適用する還元剤としては0価鉄粉よりマグネタイトの方がより適している考えられる。 2.六価クロムを還元するにあたり還元剤として活性炭を検討した結果から得られた知見として、 (1)水相のpHが低い方が六価クロムの還元反応が促進した。 (2)水相のpHが低い場合では、三価クロムは沈殿も活性炭への吸着もしないことがわかった。 (3)水相のpHが高い場合では、三価クロムは沈殿と活性炭へ吸着していることがわかった。 以上得られた知見より、土壌pHを中性付近に保持できるように陽極井戸および陰極井戸のpHを制御することで、活性炭を動電学的反応性バリア法に還元剤として適用可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
六価クロムを反応性バリア内で不動態化して固定する還元材として、土壌の強い酸性化を伴う場合にはマグネタイトが最適であることを明らかにし、動電型反応性バリアシステムの六価クロム汚染土壌・地下水への適用可能であることを明らかにできた。マグネタイトを使用することで六価クロムを三価クロムに還元し、反応性バリア内にクロムを不動態として固定するメカニズムも明らかにすることができた。一方、土壌の酸性化を制御する場合は、還元材として活性炭を本システムに適用できることも明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度に取得したデータを基に、六価クロムに対してマグネタイトおよび活性炭を還元剤として使用した動電型反応性バリア実験を実施し、その有効性を検証する。また、本年度が研究期間の最終年度であることから、これまでに得られた知見を整理し、動電型反応性バリアシステムの土壌・地下水浄化への適用性の総合評価を実施する。
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