研究概要 |
金属材料は単体ではなく合金として用いられることがほとんどである.使用済み自動車は我が国における重要な二次金属資源である(シュレッダー屑の3分の1を供給している)が,その資源回収過程において,様々な部品を構成する異種金属・合金の間で混合が生じる.従って,二次金属資源,たとえば鉄スクラップについても発生過程・選別過程によってその組成が異なり,ユーザの品質要求との対応も異なる.本年度の主要成果として,8種類(銑屑,自家発生屑,加工屑,ステンレス屑,ヘビー屑,シュレッダー屑,プレス屑,その他の鉄屑)に分類した鉄スクラップフローを2005年産業連関表基本分類(430部門)に対応する形でWIO(廃棄物産業連関)表形式で整備した.その上でWIO-MFA(Nakamura Nakajima2005)の方法により,約400部門の製品について2種類の一次鉄源(銑鉄,フェロアロイ)と8種類の二次鉄源についてその組成を推定した.その結果,自動車生産に直接・間接に投入されるシュレッダー屑の量は限定的であることが解った.自動車を構成する鉄源の約4割はスクラップ由来であるが,その4分の3は生産系の自家発生屑や加工屑である.すなわち,現状の使用済み自動車選別・破砕過程の前提では,自動車を構成する鉄源の閉じた循環を達成することは出来ない.一方,建設部門の鉄源組成では自動車と逆に老廃系スクラップの割合が生産系スクラップの割合よりも大きい.特に,シュレッダー屑の組成割合は自家発生スクラップのそれにほぼ等しい.従って,使用済み自動車由来の鉄源は建設部門においてもっぱら使用されることを定量的に明らかにした.この基本的情報と自動車の寿命モデル(ワイブル分布の形で同定している)および建築寿命モデルからマクロ的な鉄源フローの解析を来年度以降展開する予定である.
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