研究課題/領域番号 |
22360389
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大矢 恭久 静岡大学, 理学部, 准教授 (80334291)
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研究分担者 |
奥野 健二 静岡大学, 理学部, 教授 (80293596)
宮本 光貴 島根大学, 総合理工学部, 助教 (80379693)
芦川 直子 核融合科学研究所, 大型ヘリカル研究部, 助教 (00353441)
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キーワード | トリチウム / プラズマ壁相互作用 / 複合イオン照射 / 照射損傷 / リサイクリング / ヘリウム / タングステン / 炭素 |
研究概要 |
本研究は核融合炉プラズマ対向材料表面での複合イオン照射下におけるトリチウムリサイクリングを核融合炉環境のみならず種々の照射条件において実験により定量的に評価することを目的とした。また、トリチウムリサイクリングと材料照射損傷との関連を明らかにすることによりトリチウムリサイクリングに材料の影響を加えたリサイクリングモデルの提案するものである。 今年度は炭素による重水素滞留挙動への影響を評価するため、タングステンに対し重水素イオンおよび炭素イオンを種々の条件にて照射した試料における重水素の滞留挙動を昇温脱離法およびグロー放電発光分光分析にて、試料の表面状態をX線光電子分光法および透過型電子顕微鏡を用いて明らかにした。その結果、炭素イオン照射によりタングステン中に転移ループや原子空孔が形成し、重水素は表面、転移ループ、原子空孔およびバルクに滞留することが示された。さらに炭素照射によりタングステン中にW-C結合およびC-C結合が生成し、重水素単独照射したタングステンと比較し、炭素イオンの打ち込み深さである10nm以降の深い領域において重水素滞留量が減少することが明らかとなった。このことからW-C結合と照射欠陥を含むタングステン-炭素混合層が重水素のバルク方向への拡散を抑制すると考えた。また、リサイクリング評価のための照射中のスパッタリング粒子測定では、炭素イオンを予照射したタングステンへD_2^+照射すると、主にD、CD_2、CD_3が放出されることがわかった。さらに、X線光電子分光法による表面化学状態の測定の結果から、試料表面の炭素はC-W結合とC-C結合の化学状態をとっており、D_2^+照射に伴うスパッタリングによりC-W結合が選択的にスパッタされ、炭化水素として放出されることが示された。さらに、能動的な滞留量制御のための表面改質エバポレータを整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り23年度の研究は順調に進展しており、トリチウムリサイクリング評価を種々の条件下で行っている。また表面改質エバボレータの整備も完了し、今後滞留量制御を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は照射欠陥形成と水素同位体の滞留・移行過程の相関について種々の条件で明らかにしサイクリングモデルの妥当性評価を行う。さらに表面改質エバポレータによる表面改質を試み、滞留量制御の可能性について検討する。
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