研究課題/領域番号 |
22360392
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
室賀 健夫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60174322)
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研究分担者 |
長坂 琢也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40311203)
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00322529)
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キーワード | バナジウム合金 / ナノ粒子分散 / 高温クリープ / 耐食性 / メカニカルアロイング |
研究概要 |
核融合炉構造候補材として期待されている低放射化バナジウム合金の高温強度をさらに向上させるため、従来のV-4Cr-4TiにYとTiCなどの炭化物を加えた合金を、溶解法でなく、メカニカルアロイング法により作製した。ミリングボールとキャプセルの素材を変え、有効に合金化が進む条件を見出した。また作製の途中過程でのサンプリングと組成分析、X線回折による格子牢数の変化の測定により、バナジウムの中にY,Cr,Tiの順で溶解合金化が進むことが明らかになり、合金化プロセスを示すことができた。HIP処理、熱処理した材料の透過電子顕微鏡組織観察を行い、ナノ粒子が発生していること、ミリングによる機械的な介在物の混入はほとんどないことが確かめられた。添加炭化物に関しては、TiCとSiCはナノ粒子分散に効果的であるのに対して、Ti_3SiC_2はほとんどナノ粒子が発生しないことが分かった。また、組織と硬度測定の結果との比較により、サノ粒子め濃度が高いほど硬度が高く、これらの関係が、組成変形における転位の移動障壁のモデルで説明できることが示された。作製試料の硬度は、メカニカルアロイングの処理時間を延長することにより、さらに上昇させることが可能であった。しかし、処理時間を長くすることにより、合金中の含有窒素濃度も上昇することが分かり、硬化は分散粒子によるものと含有窒素のよるものの和であると考えられる。このため、メカニカルアロイングの雰囲気の一層の高純度化が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書記載事項の中で、ボールミリングとHIPによるナノ分散粒子合金の作製、評価については、当初予定に加え、溶質元素の溶解合金化プロセスが分かるなど、計画以上の成果が得られた。一方、V-7Cr-4Tiは、加工性が不十分で表面観察による評価にとどまっている。また予定回数程度の学会発表、論文制作を行うことができた。以上より、全体的には、概ね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ボールミリングによる合金化の途中で試料の窒素濃度が上昇することが分かった。これは硬化の一因をなったと考えられる。ナノ粒子分散による硬化だけを評価するためには窒素の混入は最小限に抑える必要があるので、今後はミリング容器の外部も不活性ガス雰囲気に保つため装置全体をグローブボックスに入れるように改良する。そのための治具や試験台の設計製作を同時に進めることとする。また、耐食性試験では、当初予定していた液体リチウムとの試験に加え、最近関心が高まっている液体リチウム鉛による試験も加えることとする。それらの腐食過程の違いを明らかにすることは、核融合ブランケット設計に大きく寄与すると期待される。
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