本研究の目的は、将来の超高密度高温核融合プラズマにおいて、その電子密度に関する情報を得る計測手法を確立することである。想定されている核燃焼炉における単位体積あたり1000兆個を超える電子密度を持つ超高密度プラズマを、核融合反応によって生成される中性子等の放射線対策のために制限される狭小な視野から高い空間精度で計測することが期待されている。これを実現するプラズマ診断技術の開発として、マイクロ波からテラヘルツ領域までの周波数成分をもつ広帯域な電磁波成分を満たす光源として期待できるレーザー光励起テラヘルツ波パルスによる時間領域分光法を高温プラズマ計測に適用することを目指している。本年度は、高温プラズマ計測への適用のために必要な開発試験及びプラズマを用いた初期実験を実施した。将来の核融合炉の適用を予測して、遠く離れた計測位置から、プローブ光であるテラヘルツ波を長距離伝送する手法を試験した。その技術開発として、波長分散による励起パルス光変形の少ない分散シフトファイバーを選択し、波長1.5μmパルス幅120fsのレーザー光が1~100m伝送により、どのように光ファイバー中で分散の影響を受けるのか評価した。その結果、分散の影響を定式として評価できることが明らかとなり、これにより分散補償光学系の設計が可能となった。また、この短パルス光から励起されるピコ秒のテラヘルツパルス波が高感度カメラによって観測可能であることも明らかにした。これによりテラヘルツ波伝送光学系の構築をカメラを通して目視で行えるという画期的な結果が得られた。さらにこのテラヘルツ波を低温プラズマ計測に適用し、低密度プラズマにおける信号透過特性データを取得した。これらの成果により、本研究で計画した基礎実験について、必要としていた研究データが取得でき、今後高温プラズマにおけるテラヘルツ波計測の実証実験に向けた指針が得られた。
|