極限環境下で動作する人工ダイヤモンド放射線検出器の実用化を目指す。プラズマCVD法によるホモエピタキシャル成長により高品質単結晶ダイヤモンドを合成し、高エネルギー分解能と実用的な計数率をもった放射線検出器の開発を行う。オフ角制御等を施した高品質基板を使用し、リフトオフ法によりこの基板の繰り返し使用を可能とする。これにより合成結晶の基板依存を排除した上で合成条件の最適化を図り、エネルギースペクトロメータグレードのCVD単結晶ダイヤモンドを歩留まり良く合成することを目指す。さらにアプリケーション展開の第一歩として、14MeV中性子エネルギースペクトル測定、漏洩荷電粒子測定、慣性核融合における中性子飛行時間測定、放射光・自由電子レーザーにおける電子ビーム測定、医療照射などへの適用可能性評価を行う。 オフ角制御処理を施した高圧高温合成IIa型単結晶ダイヤモンド基板を複数個製作し、その基板上にCVD単結晶ダイヤモンドの合成を行った。その結果、窒素不純物が多く含まれるIb型基板を使用した際に問題となった残留応力割れの問題は解決することに成功した。またオフ角制御基板を使用し、いろいろな合成条件でCVD単結晶を合成した結果、<001>方向と<111>方向の成長速度の比で定義されるα値が1.5あたりで基板起因の欠陥を抑制できる可能性を見出した。これまでは基板結晶の個体差による影響が大きく合成条件の影響を同一条件で評価する事が難しかったがリフトオフ法により、同一基板からいろいろな条件で結晶を合成し、電荷キャリア輸送特性の評価も行った。この結果、正孔については電荷収集効率:~100%、α線に対するエネルギー分解能:0.7%という性能をえられる結晶の合成に成功した。しかしながら、電子に対しては電荷捕獲が依然としてあり、半導体材料としての重要な指標であるμτを測定すると、理想値の1~2桁低い値が出ており今後の改善が必要となる。
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