研究課題
今年度は合底条件を系統的に変化させながらCVD単結晶ダイヤモンドを合成し、表面形態観察、カソードルミネッセンス測定、電荷キャリア輸送測定等を実行した。メタン濃度の低下に伴い、電荷キャリア輸送特性が向上し、メタン濃度:1%では電荷収集効率は正孔、電子のそれぞれに対して101%、97%を記録した。またその際の5.5MeVα線に対するエネルギー分解能は0.7%、1.1%であった。この結晶のμτ積は正孔に対して1×10-4cm2/V、電子に対して9.6×10-6cm2/Vであった。残留ガスによる影響はあるものの、正孔については報告されているベストデータと同一オーダーになった。今後、残留ガスの低減をはかり電子に対する電荷捕獲を無くし、μτ積の改善を図る必要がある。213nmUVパルスレーザーをもちいた応答測定結果では、厚さ60μm程度の結晶に対して80V程度を印加した場合、走行時間の半値幅は1ns以下であった。結晶品質の向上により、さらなる時間応答の改善も期待できる。この検出器を大阪大学・レーザー研究所に持ち込み、激光XII号の爆縮実験で測定を行った。検出器は検出効率以外は測定可能なものになっていたが、RFノイズ対策が不十分で今後の改善が必要であることが分かった。2013年以降をめどにRFノイズ対策ならびに結晶品質の向上を順次図り、爆縮実験で時間分解能100ps台のダイヤモンド放射線検出器の実現を目指す。また、2012年度は14MeV中性子応答関数測定、XFELにおける高速電子に対する応答測定も行う。
2: おおむね順調に進展している
電子に対する電荷捕獲はわずかに残るものの、エネルギースペクトロメータグレードの単結晶CVDダイヤモンドを再現性良く合成できるようになっている。特にμτ積が大きく向上したことは今後の検出器開発、半導体デバイス開発を進めるうえで重要な進歩を遂げた物と考えている。
残留ガスの低減、合成条件の最適化により電子に対する電荷捕獲の低減を進める。試作した検出器の14MeV中性子応答関数測定、XFELでの測定を予定している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Diamond and related Materials
巻: 26 ページ: 45-49
Diamond.Relat.Mater.
巻: 24 ページ: 74-77
j.diamond.2011.11.003