研究課題/領域番号 |
22360398
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岡 芳明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40011225)
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研究分担者 |
石渡 祐樹 東京大学, 工学系研究科, 講師 (10334319)
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キーワード | 高速炉 / 炉物理 / 結合炉心 / 増殖 / 炉心設計 |
研究概要 |
本研究は高速・熱中性子結合炉心の核的な特性を原子炉物理学の観点から明らかにするとともに、従来無理と考えられていた水冷却高速炉による高増殖の可能性について研究することを目的としている。 本研究の高速・熱中性子結合炉心は高速炉心に水素化物層を含む熱中性子領域があり、中性子のエネルギーが高速中性子から熱中性子領域にまで分布した、これまで炉物理的に未経験の炉心である。核計算の面でも未経験でその計算精度を知る必要がある。この炉心の冷却水ボイド反応度係数や出力分布などを指標として、核設計計算精度の検証のため、連続エネルギーモンテカルロ計算をリファレンスとして核設計計算コードSRACの結果を比較し、検討している。 燃料棒を間隔なく束ね、冷却は燃料棒間の流路で行う新燃料集合体を考案した。これにより燃料棒の密封性を損なうことなく冷却水対燃料体積比を大幅に低減することができた。この新燃料集合体を用いて水冷却による高増殖炉心を3次元炉心燃料解析法で設計し、検討した。 その結果、PWRの平均冷却水密度の条件でプルトニウム残存比(FPSR)1.055、複合システム増倍時間(OSDT)97.6年、RBWR(低減速BWR)とスーパー高速炉の冷却水密度条件でFPSRが1.405、CSDTが41年を達成した。PWR条件で増殖を、RBWRとスーパー高速炉条件でエネルギー需要の増加に相当する増倍時間が達成できる可能性のあることを世界で初めて示した。 高速中性子と熱中性子領域間の核的結合がプルトニウムの蓄積によって燃焼とともに強くなり、燃料の核的損耗を補うので、中性子実効増倍率が長期間(30年間)1を上回ることも示され、核不拡散の観点で検討されている炉の寿命中燃料交換不要原子炉を水冷却で実現できる可能性も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新燃料集合体を考案し、世界で初めて水増殖による高い増殖比を達成できる可能性を示した。水冷却による高速増殖炉の可能性は世界の多くの原子力研究者が原子力の開発利用開始以来挑戦してきた課題であり、本研究によりその可能性が示された。特許も申請済みである。論文も投稿済みである。 高速・熱中性子結合炉心の炉物理、核計算精度の課題も、連続エネルギーモンテカルロ計算と核設計計算コードの比較計算が順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
水冷却高速増殖炉の可能性ついては、この科研費の研究課題は原子炉物理学・核設計の課題であるので、その範囲では目的は達成されているが、今後は伝熱流動設計など、原子炉物理学以外の原子炉設計の課題を別途検討する必要がある。加圧水型軽水炉、沸騰水型軽水炉、超臨界圧軽水冷却炉それぞれで熱流動設計の制約条件が異なるので、これらそれぞれの原子炉について熱流動も含めた原子炉設計をまず検討する必要がある。なお新燃料集合体は冷却水流路が狭いので炉心の圧力損失が増加するが、超臨界圧軽水冷却炉は炉心流量が少なく、高圧ポンプを持つ貫流型なので炉心圧力損失増加はそれほど大きい制約ではない。ナトリウム冷却高速増殖炉と比べるのは必ずしも適当ではないが、水冷却による高速増殖炉の研究を推進する必要がある。
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