研究課題
オーステナイト系ステンレス鋼は、原子力材料として重要な合金である。照射下での強度劣化を引き起こす主要な原因であるボイドスウェリングが開始するまでには、ある程度の照射量が必要である。この照射の期間に、どのような点欠陥過程が起きているのかについては、実験的には殆ど解明されていなかった。本研究では陽電子消滅分光法と電子抵抗測定法を有効に用いることにより、透過型電子顕微鏡で観察できない原子空孔1 個レベルから、透過型電子顕微鏡でボイドが観察されるまでの照射領域で、ボイド形成の初期状態とその形成機構を調べた。平成24年度の計画は予定どおりに実行された。得られた主な成果は以下のとおりである。① KURの低温照射装置を用いて15K以下でのSUS316Lの中性子照射を行い、電気抵抗の室温までの回復を調べた。欠陥の回復と析出が同時に起きていることが判明した。 ② 低温から高温までの中性子照射及び30 MVの電子照射したステンレス鋼とそのモデル合金の陽電子消滅分光法による欠陥構造の同定を行った。低温照射ではでは原子空孔が単体で存在し、高温照射における炭素を含む合金系では、金属炭化物の析出が起きボイドの成長が妨げられること、炭素を含まない合金系ではボイドが成長することが明らかになった。 ③ 損傷構造発達過程、特にボイドの核形成・成長過程のモデリングを反応速度論に基づいて行った。従来取り入れられていなかった添加元素と点欠陥の相互作用や析出過程を取り入れた。原子空孔は溶質原子を運ぶので、必然的に析出とボイドの形成が同時に起きるが、析出物のみの成長にはボイドからの原子空孔の放出が重要な因子であることが分かった。 ④ 実験とモデリングの結果を総括することにより、オーステナイト系ステンレス鋼におけるボイド形成の初期過程に及ぼす照射温度と添加元素の影響に関する多くの知見を得た。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Nuclear Materails
巻: 巻数未定 ページ: ページ数未定
10.1016/j.jnucmat.2013.01.319
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Philosophical Magazine
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