研究課題/領域番号 |
22360404
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川本 卓男 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 教授 (10231276)
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研究分担者 |
戸崎 充男 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 准教授 (70207570)
角山 雄一 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 助教 (90314260)
大澤 大輔 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 助教 (90324681)
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キーワード | α線 / 放射線生物影響 / 照射装置 / DNA修復 / 飛程 |
研究概要 |
α線(He^<2+>イオン)のような高LET放射線による内部被ばくは重篤な影響を及ぼすこともあって、その影響を分子・細胞レベルで理解することが、求められている。既に、低LET放射線であるX線照射による生体影響解析分野においては、顕微鏡下で細胞単位での照射が行なわれ、解析が進めちれている。また、高LET放射線の一つである粒子線照射の分野では、加速器によるイオンビームを細胞一個のスケールまで照射範囲を矮小化することに成功している。しかし、加速器利用は高度な専門知識と大型の照射施設を要し、多くの研究者にとって敷居が高いのが現状である。そこで、我々は、顕微鏡下でも簡便に細胞照射に用いることのできるマイクロα線源の作成を試みた。 平成23年度は、時空間的解析の対象細胞としてGFPとDNA損傷修復関連蛋白質RPA70との融合蛋白質が発現するヒト培養細胞を用意し、マイクロα線源を用いて、主に、一細胞に照準を定めて照射を行う「ーターゲット細胞への照射実験」を試みた。 水中で1~数cpm程度の強度のマイクロα線源を、マイクロマニピュレーターを用いて標的細胞から数μmの距離に近接させ、その細胞核に対して1~数個のα粒子を液体培地中でヒシトさせた。その結果、照射後のα線照射細胞において、RPA70の集積を示すGFP蛍光スポットの形成が観察された。これにより、本研究課題において開発中の卓上顕微照射装置を用いることで、一個の細胞に照準を定めてα線照射を行える可能性が示せ、その際、一標的細胞あたり1~数個のイオンを照射できること、などが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロα線源から放出されるHe2+イオンを、時空間的解析用に用意した標的細胞の一細胞に照準を定めて照射し、その影響を観察することができた。本課題申請時は、ガイドやコリメータを用いて放出イオンの指向性を集束させることを予定していたが、現在使用のマイクロα線源であればそのような仕組みを用いずとも、液体培地を遮蔽として利用することで照射径を一細胞スケールまで矮小化できる可能性があることも判明した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度α線照射後の影響解析の指標として用いたRPA70は、DNA損傷部位への集積までに一時間以上を要した。そこで、より多角的に照射細胞たおける影響観察ができるよう、他の指標因子を検討する。また、細胞にヒットするエネルギーやイオン数を事前に推定できるよう、新たなマイクロ線源性能評価方法の確立を目指す。
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