研究概要 |
電力貯蔵の必要性が増大している一方、NaS電池の爆発事故や、中国における鉛蓄電池の生産規制などを背景として、電池には高エネルギー密度、安全性、低コスト等が要求される。このような電池として研究代表者はバナジウム固体塩電池(以下、バナジウム電池またはVSSB)を発明した(J. Power Sources, 196 (2011) 4003.)。バナジウム電池開発の契機は申請者らが培ってきた電解調製技術により、バナジウム5価~2価の各酸化状態の安定な塩(バナジウム塩安定相)を調製できたことであり、バナジウム固体を用いるためエネルギー密度が高く、可動部がないことから小型化が可能という長所を持つ。2012年5月に実用電池としての動作確認成功、長期間安定動作確認と進み、11月時点で小型2 Ah電池(iPhone 4Sサイズ)に進んできた。 VSSBにおいて、過電圧を伴う電池反応過程は3つある;(1) 電極反応過程(電極過電圧)、(2)拡散過程(濃度過電圧)、(3) 析出ー溶解過程。バナジウムレドックスフロー電池では、バナジウム濃度が比較的低いため、(1)と(2)のみであることが知られている。V(II)/V(III)およびV(IV)/V(V)の反応に対する反応速度定数k0は「定数」であり濃度に依存しないと信じられてきた。我々は、Nyquistプロットを用いて体系的なインピーダンス研究を行い、広範なの濃度のV(III)、V(IV)の体系について研究した。バナジウム濃度の増大とともに、PG(c-plane)電極上でのV(II)/V(III)およびV(IV)/V(V)に対するk0は減少することが判明した。これはフェリシアン化カリウムにおいても同様の傾向が確認できた。 これは濃度を高めることにより電極反応過電圧を増大させる結果であり、電池設計上の課題である。
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