本年度は、最終年度としてこれまでの知見を活かしてミクロチューブセルを作製し、内部アノードに銅を加えた構造を持つセルについての検討を行った。この場合に、銅の添加がセルの作製時において焼結性に大きな影響を与えることが明らかとなったため、作成段階での精密な前処理の制御により破損なく作製できることを確認している。既に、メタンガスを燃料とした場合については炭素析出を抑制効果が観察されているが、本基盤研究の主目的の一つである液体燃料への適応を検討した。新たな燃料としては、近年液体燃料の候補として考えられているバイオエタノールを意識して、エタノールの適用を考えた。本研究では、新たに燃料中の燃料‐水割合(EtOH/H2O)の影響を考察するために、混合物の気化を用いた燃料供給装置によって、その比率を変化させることにより発電性能と安定性について600℃以下の低温条件での検討を進めた。この検討によって適切な燃料‐水比より燃料が過剰な場合には炭素析出が顕著になる一方で、水が過剰な場合には、アノードでのニッケル金属の酸化が生じて発電が困難になることが確認された。このセルについては、そのチューブ径が微細なほど電極面積当たりの出力が高くできることも確かめられている。さらに、こうした検討結果が得られたミクロチューブセルやコーンセルについてのスタック化についても検討を行ってみた。接続による抵抗増加のため発電性能は十分ではないものの、比較的自由な形状付与が可能なことから、ミクロチューブセルの今後の集積化の基礎になる知見が得られた。
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